研究課題
一次繊毛とはほぼすべての細胞が1本持ち、培養細胞では細胞周期の休止期G0/G1に形成される細胞小器官である。これは基底小体を起点とした微小管から成る軸糸を骨格とする「細胞外へ突き出した」構造体(直径250 nm, 長さ1-10 μm)であり、他の細胞小器官とは異なり、細胞質から隔離するような脂質膜がない。しかし、一次繊毛膜と細胞膜のリン脂質の種類は大きく異なる上、繊毛膜上には細胞膜と比べると限られた種類の膜受容体が高密度に局在するという特徴を有する。そのため、一次繊毛は環境シグナルを鋭敏にキャッチ-増幅し、細胞内へと伝える “シグナルハブ”と考えることができる。メラニン凝集ホルモン(MCH)は中枢性摂食亢進ペプチドであり、その受容体MCHR1(GPCR)は海馬、扁桃体、線条体を含む神経細胞一次繊毛に集積することが示されている。申請者は、MCHは繊毛に発現したMCHR1を介して繊毛長短縮を起こすという新しい現象を見出し、Gi/o-Aktが縮退開始シグナルであることを明らかにした。本研究では、神経細胞の一次繊毛局在型GPCRによる情報伝達機構とその生理的意義を解明するため、細胞レベルと個体レベルでの解析を並行して行う。締めくくりとなる今年度(最終年度)は、MCHR1を介した一次繊毛縮退に到るまでのAkt以降のシグナルリレー経路を同定(vivo, vitro)した。さらにMCHR1を繊毛マーカーとすることで、アルツハイマー病 (AD)モデルマウスにおける病理はβアミロイド蓄積による海馬一次繊毛変動と関連することを見出した。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 4件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 2件)
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