研究課題
海産無脊椎動物ホヤ類は、(1)海水中で基質に強固に接着するという性質と、(2)血球中に高濃度の金属イオンを蓄積する性質をもつ。血球に蓄積された金属の役割はまったく不明であったが、我々は最近の知見にもとづき「ホヤ血球が被嚢の接着面まで金属を運搬し」かつ「金属結合タンパク質が接着に寄与する」のでは ないかとの学術的な問いを設定した。本研究は3年間の研究期間で、(1)ホヤ被嚢の形成・接着過程における血球移動経路の解明とCa2+イメージング、(2)刺激応答性Ca2+チャネルおよび接着タンパク質のin vitro機能解析、(3)それら遺伝子のin vivo機能破壊解析を実施する計画である。2021年度は主にスジキレボヤの接着タンパク質候補分子von Willebrand factor type-A proteinおよびバナジウム放出チャネル候補分子 Ferroportinの定量的RT-PCR解析、特異的抗体を用いたウェスタンブロットおよび免疫染色法を用いた接着タンパク質候補分子の発現部位の解析、特異的抗体を用いた接着阻害実験、接着タンパク質組換えタンパク質を用いた接着アッセイおよび金属結合アッセイ、RNAi法による接着阻害実験を行った。比較対象としてミズクラゲのポリプに特徴的なタンパク質のLC-MS解析から接着タンパク質候補分子の探索を行った。関連する研究として両生類の接着物質に関する研究を行った。研究期間全体を通じた主な成果として、血球および被嚢中の血球様細胞の形態と挙動ならびに上述の2つの遺伝子産物の発現部位と金属選択性を明らかにし、金属運搬および接着への寄与を示唆する結果を得た。Ca2+との関連については明確な結果は得られなかった。研究期間全体で8件の論文発表、16件の学会発表、1件の著書として公開した。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件)
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