研究課題/領域番号 |
19K06742
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
八木沢 芙美 琉球大学, 研究基盤センター, 准教授 (70757658)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / リソソーム / 相互作用 / Cyanidioschyzon |
研究実績の概要 |
リソソーム(液胞)は細胞内分解を、ミトコンドリアは細胞内のATP生産を担うオルガネラである。これらのオルガネラの物理的な相互作用は、脂質輸送(リソソームからミトコンドリア)、分裂(ミトコンドリア)といった現象に関わることが近年明らかとなってきている。私たちは、最もシンプルな真核生物の一つである原始紅藻Cyanidioschyzon merolae(通称シゾン)において細胞分裂期特異的にリソソームがミトコンドリアに密着することを見出した。シゾンはオルガネラを一つずつしか含まず、細胞分裂とそれに伴うオルガネラの分裂・増殖を明暗周期により同調できることから、このミトコンドリアとリソソームの物理的な相互作用も同調できる。また、ゲノムが解読されており(16.5 Mb)、形質転換法も確立している。本研究では、シゾンをモデルにミトコンドリアとリソソームの物理的相互作用のしくみやその生理的な機能を明らかにすることを目的としている。2020年度は、以下を行った。 1. 動物と酵母では低分子量GTPase Rab7がミトコンドリアとリソソームの相互作用に関わることが報告されている。Rab7を介した相互作用の真核生物における保存性を調べるため、野生型と2種類の変異型Rab7を過剰発現するシゾンの株を作成し、ミトコンドリアとリソソームの結合頻度などを解析した。これらのオルガネラの結合に株間の差は認められなかったため、Rab7を介した相互作用の有無についてはさらに検証が必要である。 2. 昨年度に作成したリソソームの機能変異株について表現型解析を行い、エネルギー状態の異常などを確認した。今後、これらの表現型とミトコンドリアの機能との関連性や、ミトコンドリアとリソソームの物理的相互作用との関係を明らかにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験計画に従い、ミトコンドリアとリソソームの相互作用に関わる可能性のあるタンパク質について局在を解析した。また計画にしたがって、ミトコンドリアとリソソームの相互作用の持つ生理的な意義を解明するために、昨年度作成したリソソームの機能変異株において種々の表現型解析を進めた。この結果、エネルギー代謝の異常などミトコンドリアの機能と関連する可能性のある表現型が確認されている。今後、この表現型とミトコンドリアの機能やミトコンドリアとリソソームの物理的相互作用との関係を明らかにしていく予定である。以上のように、研究はおおむね順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
以下の1, 2について研究を進める。 1. ミトコンドリアとリソソームの相互作用におけるRab7の関与を引き続き検証する。昨年度用いた変異型の過剰発現株は、野生型遺伝子が残っているため表現型が検出されなかった可能性がある。シゾンのRab7は必須遺伝子である可能性が高く遺伝子破壊は困難と予測されるが、ミトコンドリアとリソソームの結合のおこる細胞分裂期特異的にRab7と相互作用する分子が同定されれば研究を進める手がかりとなる可能性がある。シゾンでは動物や酵母でミトコンドリアとリソソームの相互作用においてRab7とインタラクションすると報告されている分子の明らかなホモログは見つかっていない。このため、細胞分裂期およびミトコンドリアとリソソームの結合が認められない間期のRab7をそれぞれ免疫沈降し、比較プロテオーム解析を行い、分裂期特異的にRab7と相互作用する因子の同定を試みる。 2. リソソームの機能変異体について、引き続き表現型解析を進める。まず、この機能変異体におけるミトコンドリアの状態を解析する。このためにトコンドリア活性の測定や形態の顕微鏡観察などを行う。また、間接蛍光抗体染色法等により、この変異体におけるミトコンドリアリソソームの結合状態を顕微鏡解析し、このリソソームの機能変異がこれらのオルガネラの相互作用に影響を及ぼす可能性について検証する。リソソームの機能変異体はエネルギー代謝の異常をはじめ、いくつかの異常を示している。リソソームの機能変異体においてミトコンドリアの機能異常や相互作用の異常が確認された場には、どの表現型がミトコンドリアの異常とリンクするのか、遺伝学的な相補実験などにより明らかにする。これらの結果について論文を執筆する。
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