リソソーム(液胞)は細胞内分解を、ミトコンドリアはエネルギー生産を担うオルガネラである。これらのオルガネラの物理的な相互作用は、脂質輸送(リソソームからミトコンドリア)、分裂(ミトコンドリア)のいった現象に関わることが近年明らかとなっている。私たちは、最もシンプルな真核生物の一つである原始紅藻Cyanidioschyzon merolae(通称シゾン)において細胞分裂期特異的にリソソームがミトコンドリアに結合することを見出した。シゾンはオルガネラを一つずつしか含まず、細胞分裂とそれに伴うオルガネラの分裂・増殖を明暗周期により同調できることから、このリソソームとミトコンドリアの結合も同調できる。また、ゲノムが解読されており(16.5 Mb)、形質転換法も確立している。本研究は、シゾンをモデルにリソソームとミトコンドリアの結合のしくみやその生理的な機能を明らかにすることを目的とした。 リソソームとミトコンドリアの結合に関わるタンパク質VIG1は、一般に30以上のタンパク質からなるESCRT複合体の構成因子である。本研究において他のESCRTタンパク質がこれらのオルガネラの結合を担う可能性を検証したところ、VIG1と同様のはたらきを示すESCRTタンパク質は見出されず、VIG1がESCRTタンパク質として特異的な機能を持つことが示唆された。一方、ESCRTがシゾンの細胞質分裂において最終的な娘細胞の分断を担うことが副次的に明らかとなった。このような細胞質分裂は動物細胞と古細菌でしか知られていない。本発見は、真核生物の共通祖先がESCRTを介した分裂を行っていたことを示唆することから、進化的に重要な知見として論文を発表した。また、リソソームの機能欠損体の表現型を解析し、リソソームがミトコンドリアに及ぼす作用について知見を得た。これらのデータをまとめ、論文を投稿準備中である。
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