研究課題/領域番号 |
19K06749
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
中澤 友紀 法政大学, 生命科学部, 助手 (50508851)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中心子 / トリプレット微小管 / 中心小体 / γ-tubulin / 微小管 |
研究実績の概要 |
中心子・繊毛軸糸に見られる安定な微小管系、「トリプレット・ダブレット微小管」の形成機構については、細胞質微小管の場合と同様にγ-tubulinが関与するのかと言う問題を含め、大部分が未解明である。しかし最近、我々はクラミドモナスの新規γ-tubulin突然変異株bld13を単離し、この株がトリプレット微小管構造に異常を示すことを明らかにした。そこで本研究ではこのbld13を含めた複数の関連突然変異株を用い、それぞれの変異遺伝子間の遺伝学的相互作用の解析を行うことでトリプレット形成の分子機構の解明を目指す。本年度は以下のように研究を進めた。 1)SAS-4について 我々は最近bld13の他に、トリプレット形成・保持に寄与すると考えられるタンパク質SAS-4の新規null突然変異株bld14を単離した。本年度はこのbld14株にHAタグを付加した野生型SAS-4を発現させ、中心子近傍におけるHA-SAS-4の詳しい局在を観察した。その結果、HA-SAS-4は中心子proximal側に局在しており、界面活性剤によって微小管構造の一部を破壊した後でもこの局在はある程度保たれることがわかった。したがって、SAS-4は中心子構造のより内部に組み込まれて存在する可能性が示唆された。 2)トリプレット関連多重変異株の解析 当初研究に用いる予定であった既存の変異株の表現型が安定しないと言う知見から、我々が新たに単離したトリプレット関連タンパク質Poc1の新規突然変異株poc1を用いることとし、これまでに二重変異株poc1bld14, poc1bld13の作製が完了した。このうちpoc1bld14の簡易的な表現型解析を行ったところ、それぞれの単独変異の場合と比べて加算的な表現型を示したことから、Poc1とSAS-4はそれぞれ独立してトリプレット微小管形成に寄与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
夫の異動に伴い、自身も令和元年5月の着任から一年未満で当時の職を退職し、令和2年4月から遠方機関の現職へ就職することとなった。そのため本年度は大部分の時間を引き継ぎなどの異動のための準備に費やしたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、 1)SAS-4について 作製済みのHA-SAS-4発現株を用い、免疫電子顕微鏡法によって中心子 proximal側のトリプレット微小管近傍におけるHA-SAS-4の局在を詳細に検討する。 2)多重変異株の作成と解析 bld13bld14を含め、さらなる多重変異株を掛け合わせによって作製する。作製済みの多重変異株については、一細胞あたりの鞭毛数のカウントなどの表現型解析とともに、中心子マーカータンパク質に対する抗体を用いた間接蛍光抗体法による観察を行い、中心子構造の異常の有無や程度を検討する。また、順次電子顕微鏡によりその中心子構造の異常を観察する。
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