研究課題/領域番号 |
19K06750
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
西川 正俊 法政大学, 生命科学部, 助教 (30444516)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | キラリティ / 左右軸形成 |
研究実績の概要 |
多くの生物種において左右軸は最後に決定される体軸であり,これによって胚がキラリティを獲得する.本研究課題は線虫の胚発生における左右軸形成に着目し,生命システムがキラリティを獲得する原理の理解を目指す.線虫胚の左右軸形成は,4細胞期に細胞分裂軸が回転することでキラルな細胞配置をとることをきっかけとする.本研究課題はこの回転機構の解明を目指し,ディープラーニングと細胞イメージングを組み合わせて研究を行う.本年度は以下の3点について研究を行った.まず,ディープラーニングモデルのチューニングにより予測精度を改良した.次に,左右軸がランダムになることが知られている遺伝子gpa-16のRNAiによる左右軸形成に及ぼす影響を調べた.蛍光イメージングにより分裂軸の回転方向を求めたところ,gpa-16RNAi胚は回転方向の反転に加えて,回転方向が直交してキラリティそのものに異常を示すことがあり,RNAiによって複雑な挙動を示すことがわかった.この実験ではアガロースパッドにより胚を押しつけて観察しており,回転前の分裂軸と押しつける方向は一致している.観察したすべての胚において分裂軸の回転は見られたことから,アガロースパッドで押しつけられて分裂細胞は伸長しながら回転することを示している.最後に,PDMSによる微小チャンバーを作製し,胚発生を観察するスペースを厳密にコントロールする実験系を構築した.今年度は野生型を用いて実験を行い,分裂軸回転方向を90度回転させることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りにディープラーニングによる分裂軸回転の予測が可能になった.また,左右軸形成に異常を示すRNAi胚の動態の詳細を明らかにし,回転初期の分裂軸方向が不安定である可能性を示す結果も得ているから.
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今後の研究の推進方策 |
まず,今年度作製したPDMS微小チャンバーを用いてgpa-16 RNAi胚の左右軸形成の動態を明らかにする.その後にgpa-16RNAi胚の核変位データディープラーニングモデルを用いた詳細な解析を進めていく.それに基づいて,野生型モデルとの比較からキラル対称性の破れを生み出す機構の解明を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は,左右軸形成がランダムになる遺伝子の解析に時間を割いた.概要で述べたgpa-16に加えて複数遺伝子で同様の表現型を示すことを,詳細な動態解析から確認した.このため,当初計画していた力学的摂動実験系の確立には至らなかった.次年度早い段階での立ち上げを目指す.
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