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2019 年度 実施状況報告書

発声学習能における新たに同定したペプチド断片の機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 19K06751
研究機関麻布大学

研究代表者

戸張 靖子  麻布大学, 獣医学部, 講師 (90453919)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード神経ペプチド / 鳴禽類 / 発声学習 / 社会性 / 求愛歌 / 家畜化 / 家禽化
研究実績の概要

本年度は、私たちがキンカチョウの脳より同定したペプチド断片をコードする遺伝子Xの同定を行った。雄のキンカチョウの脳には、一つの遺伝子Xから二つの遺伝子産物が合成されていることが明らかとなった。またこの遺伝子Xは、第19染色体の1.2 Mb付近にあることがわかった。これらの遺伝子産物から推定されるアミノ酸配列からは、私たちがターゲットとするペプチド断片が、タンパクの翻訳後に二つのタンパク質から切断されてことが推測された。in situ hybridization法を用いて、キンカチョウの神経系における遺伝子Xの発現の雌雄差を解析した。鳴禽類の脳には、歌の学習と産出に関わる特別な神経回路が存在する。雄の脳において遺伝子Xは、歌の産出に関わる領域で高発現を示したが、歌の学習に関わる領域では周囲の領域より極端に発現が低いことがわかった。一方、雌では、雄で遺伝子Xの発現が異常に低いか、全く見られない歌の学習に関わる領域で、周囲の領域と同く高発現を示した。よって、歌の発声に関わる領域では雄が高発現、歌の学習に関わる領域では雌が高発現という雌雄差が明らかとなった。現在、遺伝子Xの発現の雌雄差について論文としてまとめているところである。また私たちは遺伝子Xがコードするペプチド断片を2種類同定しいる。2種類のペプチド断片それぞれに対して、ウサギに合成ペプチドを投与してポリクローナル抗血清をつくった。今後、この抗血清をを用いて、ペプチド断片が神経細胞のどこに局在しているのかを明らかにする予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

キンカチョウの脳から同定したペプチド断片をコードする遺伝子Xの転写物にスプライシングバリアントがあること、それらから翻訳される前駆体タンパク質が2つあること、歌制御系の中で遺伝子Xの発現に雌雄差があることなど予想外の発見があった。また雄の脳において、遺伝子Xが学習性の発声に関わる神経核に高発現していることから、遺伝子Xが後天的に獲得された音声の発声に関係していることがより強く支持された。現在、この内容を論文としてまとめているところである。

今後の研究の推進方策

2種類の断片ペプチドに対して作製した抗血清を用いて、断片ペプチドが神経細胞のどこに局在するかを明らかにする。またペプチド産生神経細胞の投射先を明らかにし機能を推測する。推測された機能に関して、合成ペプチドの脳内投与やsiRNAによる内因性のペプチドのノックダウンされた個体の行動の変化を解析してペプチドの機能を明らかにする。遺伝子Xの発現の孵化後発達変化を明らかにする。遺伝子Xは犬の家畜化との関連が強い遺伝子なので、キンカチョウの近縁種であるジュウシマツの家畜種と野生種で脳内発現を比較する。

次年度使用額が生じた理由

本年度は、国際学会に参加せず、また毎年参加している国内学会である鳥類内分泌研究会を所属機関で主催したため旅費を使用せず、申請していた額を試薬代としてして使用した。その差額が次年度使用額(16739円)となった。次年度使用額は、翌年度の試薬代として用いたい。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Effects of social information on the release and expression of gonadotropin-inhibitory hormone in birds2019

    • 著者名/発表者名
      Tobari Y, Tsuitusi K
    • 雑誌名

      Frontiers in Endocrinology

      巻: 10 ページ: 243

    • DOI

      10.3389/fendo.2019.00243

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] α2A アドレナリン受容体を介する雄ウズラの 求愛発声抑制のメカニズム2020

    • 著者名/発表者名
      増澤杏実, 原田倫圭, 戸張靖子
    • 学会等名
      日本動物学会関東支部第72回大会
  • [学会発表] 野生および家禽ジュウシマツにおける受容体遺伝子 X 群の脳内発現比較2020

    • 著者名/発表者名
      草野玲奈, 戸張靖子
    • 学会等名
      日本動物学会関東支部第72回大会
  • [学会発表] 鳴禽類の野生原種と家禽種におけるメソトシンmRNA発現細胞の脳内分布2019

    • 著者名/発表者名
      戸張靖子, 佐藤芳美, 丸谷桃花, 藤岡明香, 神作宜男, 鈴木研太, 岡ノ谷一夫
    • 学会等名
      第90回日本動物学会
  • [図書] 生き物と音の事典2019

    • 著者名/発表者名
      戸張靖子 分担執筆
    • 総ページ数
      464
    • 出版者
      朝倉出版
    • ISBN
      978-4-254-17167-9

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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