研究課題/領域番号 |
19K06752
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研究機関 | 公益財団法人サントリー生命科学財団 |
研究代表者 |
佐竹 炎 公益財団法人サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所・統合生体分子機能研究部, 主幹研究員 (20280688)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 神経ペプチド / 受容体 / カタユウレイボヤ / 卵胞 / 成長 / 成熟 |
研究実績の概要 |
脊椎動物と最も近縁な無脊椎動物であるホヤは、脊椎動物の卵胞成熟制御機構のプロトタ イプとホヤ特異的な機構の双方を有していると考えられる。したがって、ホヤの卵胞成熟機 構の解明は、脊索動物全体の卵胞成熟制御機構がいかに進化・多様化したかという内分泌学、生殖生物学、進化生物学上の本質的な問題の解決へのブレイクスルーとなる。近年、申請者らは、ホヤ特異的な新規神経ペプチドの一つ、Ci-LF8とその受容体を同定し、Ci-LF8が卵巣に特異的に発現していることを明らかにした。本研究では、Ci-LF8が制御する卵胞成長 成熟機構を体系的に解明し、同機構の進化や多様化を紐解く道を拓く。2019年度では、Ci-LF8の受容体(CiLF8-R)が前卵黄形成期(Stage I)の卵胞にCiLF8-Rの発現が集中することを突き止めた。この結果を基に、2020年度はStage Iの卵胞を申請者らが開発・公表した手法を用いてStage I卵胞を単離し、CiLF8を投与して16時間後にRNAを抽出した。さらに、RNA-seqを行い、CiLF8未処理のものと処理したものの間で発現が変動している遺伝子群を検出した。その結果、タンパク生合成や細胞増殖に関与する遺伝子の発現上昇が認められた。また、CiLF8のTALENによるゲノム編集体の作製と増殖を続行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度に実施予定であったRNA-seqを2回実施し、再現性がある遺伝子を検出するという、本研究計画で最も中心となる実験を行い、有益な結果を得ることができた。現在は、計画通りに得られた遺伝子を機能レベルで分類するGO解析と、これらの遺伝子発現変動の再現性を定量PCRで確認している。また、CiLF8-RのTALEN体は、他の遺伝子のTALEN体と比べて致死体がやや多く、成長が遅いことが認められるものの、CiLF8-Rホモ欠失体を得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、CiLF8で変動する遺伝子を確定し、その阻害剤存在下でStage I卵胞にCiLFを投与して、CiLF8のStage I卵胞に対する作用を確定することを主軸とする。CILF8-RのTALEN体が十分に獲得できれば、in vivoにおける作用とin vitroの上記の作用とを総合してCiLF8の生物学的役割を解明する方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響により予定していた実験を一部中止したため。
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