研究課題
動物の光環境応答の一つ、体色変化(背地適応)は網膜の光受容細胞が制御する。5種類あるメラノプシン遺伝子の一つがこの光制御に関与することが示唆されていたが、さらにこの遺伝子と別のメラノプシン遺伝子との二重KO系統を作製・解析したところ、背地適応が大きく損なわれることがわかった。これら2つのメラノプシンは、異なる明るさの光環境下で背地適応を制御すると考えられる。また、背地適応制御には視細胞も関与することがこれまでの研究から明らかになっているが、蛍光タンパク質発現系統の解析などから、視細胞は上述のメラノプシン遺伝子の発現細胞に直接神経接続することが示唆された。背地適応は5日齢幼生や成体において観察されるが、2日齢幼生はこれとは異なり、光依存的な黒色化を示す。この幼生型体色変化を制御する光受容分子の波長特性を推定するため、2日齢幼生において420~580nmの単一波長の刺激光に対する体色変化の感度を測定した。得られた光作用スペクトルは成体型のものとは大きく異なることがわかった。幼生型体色変化は背地適応制御とは別の光受容分子により制御されると考えられる。青錐体は背地適応に関わる光受容細胞の候補の一つである。青錐体オプシン遺伝子の発現制御解析から、青錐体の分化制御メカニズムに関わる転写因子Foxq2を同定することに成功した。さらに比較ゲノム解析より、foxq2遺伝子は哺乳類の進化初期に失われたことが判明した。これは青錐体オプシン遺伝子が哺乳類進化の過程で失われたことと一致し、脊椎動物の光感覚進化を考えるうえで重要な発見となった。また、体色変化を引き起こすホルモンの一つ、メラトニンは脳内の松果体から分泌される。松果体に発現する遺伝子群の解析から、松果体特異的な遺伝子発現を制御する転写因子Bsxを同定した。Bsxは松果体ニューロンの発生・分化に必須であることがわかった。
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