研究実績の概要 |
本研究では、線虫C. elegans体壁筋の活動鎮静化によって咽頭(摂食器官)のポンピング運動が停止する、という現象の機構解明を目的として、ポンピング停止シグナルの、(1)受容機構の解明と受容器細胞の特定、(2)内分泌的制御に関わる細胞と物質の特定を行う。 本年度は以下の結果を得た。 (0)光作動性アニオンチャネルARC-2を用いた線虫C. elegans体壁筋の活動鎮静化によるポンピング停止について、各種変異体背景での実験を行ったところ、ポンピング阻害がunc-31変異に影響されないという予想外の結果が得られた。この系統ではArchを用いた体壁筋鎮静化とは異なる機構でポンピング停止が起きている可能性が高いことが明らかになった。 (1)シグナル受容に関わると期待される候補遺伝子(trp-2, met-3, mec-10, trp-1, unc-8, trp-4, osm-9, trp-1 trp-2, trpa-1)各変異をncIs53(myo-3p::Arch::GFP)系統に導入して解析を行った。 (2)多くのペプチドホルモン産生に必要であるproprotein convertaseをコードするegl-3のnull 変異によって、“遅い”ポンピング阻害が消失することを確認した。 ・当初の計画では神経系のRNAiのためにsid-1遺伝子を異所発現するトランスジェニック系統 uIs60[unc-119p::sid-1]を利用することを予定していた。しかしuIs60をncIs53に導入してunc-31によるfeeding RNAiを行ったが、運動異常(Unc)表現型が観察されず、また神経系で発現するmCherryに対するRNAiでも蛍光がほとんど低下しなかった。そこで、RNAiに対する感受性を向上させる eri-1; lin-15b 二重変異をncIs53に導入した系統を作成した。
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