研究実績の概要 |
本研究では、光駆動性プロトンポンプArchによって線虫C. elegans体壁筋の活動を鎮静化すると咽頭(摂食器官)のポンピング運動が阻害される、という現象の機構解明を目的として、ポンピング運動阻害シグナルの、(1)受容機構の解明と受容器細胞の特定、(2)内分泌的制御に関わる細胞と物質の特定をめざした。 1)線虫の多くの感覚神経細胞は感覚繊毛をもち、これが感覚受容に重要であることが示されている。そこで感覚繊毛形成に必要な一般的な遺伝子che-2, che-3 の変異体における光照射によるポンピング運動阻害について調べたが、野生型に比べて阻害低下はみられなかった。 2)昨年度 神経ペプチド遺伝子に対する二本鎖RNA(dsRNA)を発現する大腸菌を餌に用いてFeeding RNAを行い、内分泌的制御に関わる遺伝子のdsRNA発現大腸菌ライブラリーを検索した。神経細胞でのRNAi効率を高めるために導入したeri-1; lin-15b変異によって成虫ではArch::GFPの発現が顕著に低下してしまい、従来の照射条件下では緑色光による体壁筋弛緩が引き起こせなかった。 このため、上記検索実験ではArch::GFP発現低下が比較的少ない幼虫期の幼虫を用いることにし、1次スクリーニングにおいてポンピング運動阻害が低下する8個の候補遺伝子を得たものの、その後の実験では、結果が再現できなかった。 そこで、今年度は幼虫を対象にした照射条件を再検討した。しかし、幼虫の発生段階のわずかな違いに起因すると考えられる個体間でのArch::GFPの発現量のバラつきのため、安定した強度の体壁筋弛緩、そしてポンピング運動阻害を引き起こす実験条件を最終的に決定することができなかった。
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