研究課題/領域番号 |
19K06774
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
仲村 朋子 (吉川朋子) 富山大学, 学術研究部教育研究推進系, 准教授 (30451397)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 概日時計 / 視交叉上核 / 振動体 / 位相 / 日長 |
研究実績の概要 |
視交叉上核(SCN)に存在する概日時計は、日暮れを認識するEvening (E)振動体と夜明けを認識するMorning (M)振動体を持ち、日長の変化に対応した活動期の開始と終了を制御している。この2つの振動体は双方向にカップリングしており、その位相関係により日長が認識されると考えられているが、そのメカニズムは謎に包まれている。 カルシウム・カルモジュリン依存性キナーゼⅡα(CaMKⅡα)に点変異(K42R)を導入したノックインマウスの活動リズムを測定した所、E/M振動体間のカップリングに変調をきたしていることを示唆する結果が得られた。そこで、CaMKⅡα K42Rマウスの長期恒暗条件下における輪回し活動と歩行活動を測定し、その概日リズムを詳細に解析した。すると、CaMKⅡα K42Rマウスでは、E振動体からM振動体へのカップリング強度が相対的に低下していると考えられた。輪回し活動は、活動性のフィードバック作用により、マウスの概日リズムを変化させることが知られている。そこで、恒暗条件下において、飼育ケージより回転輪を取り外したところ、野生型マウスでは、先行研究に一致して概日リズム周期の延長が見られた。一方、CaMKⅡα K42Rマウスでは、周期短縮という反対の結果が得られた。E/M振動体間のカップリングのバランス、E/M振動体それぞれの概日周期などから、この結果を説明するモデルを提案すべく、解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度4月より現所属大学に移動した。コロナ禍により、研究活動が制限された時期があり、実験機器の移設および実験動物である遺伝子改変マウスの移送が遅れた。移送後に、マウスの繁殖コロニーを立ち上げ、実験用のマウスが供給できるようになるまでさらに時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
実験に使用する遺伝子改変マウスを安定に供給できるよう、繁殖コロニーの拡大を図る。実験モデルとして、引き続きClock変異マウスおよびCaMKⅡα K42Rマウスを使用する。活動リズム測定に培養SCNスライスからの時計遺伝子発現リズム解析を組み合わせた解析を進める。E/M振動体のカップリングに対する理解を深めることを通して、日長識別メカニズム解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属大学を移動したことに加えて、コロナ禍により、研究活動が制限されたため、予定通りに研究を進めることができなかった。実験動物の繁殖コロニーは立ち上がり、その他の実験環境も整いつつある。まず、マウスの活動リズム測定など、時間のかかる実験を優先的に開始する。それと並行して、繁殖コロニーの拡大を図り、他の実験で使用するマウスを短時間で用意できる体制を構築する。
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