1)具体的内容について:ヒメツリガネゴケの2つのPASヒスチジンキナーゼ1/2(PHK1/2)とそれらに関連する多段階リン酸リレー系(MSP)の研究を進めた。 最終年度:コケ原糸体細胞を用いGFP局在解析と二分子蛍光補完法を行い、(i)時計タンパク質PRR1~3はMSP中継因子のHPt1/2と核内で結合する;(ii)PHK1/2は日内制御を受け、夜には核に、昼には核と細胞質に局在する;これを受け、(iii)PHK1/2-HPt1/2の結合も、夜には核で、昼には核と細胞質で起きることがわかった。また (iv)定量PCRにより、PHK1/2のmRNA量も日暮れに最小を示す日内制御を受けることがわかった。さらに(v)PHK1/2破壊株を用いた実験により、PHK1/2はCCA1a他の時計遺伝子の発現リズムを制御することがわかった。 事業期間全体:1~2年目には、PHK1/2の局在そしてHPt1/2との結合の細胞内分布が赤色光に制御されること等を明らかにした。さらに最終年度に、PHK1/2に始まり、HPt1/2そしてPRR1/2/3を介し概日時計を制御する新たなMSP経路の概容を解明できた。 2)成果の意義・重要性等について:MSPのヒスチジンキナーゼは、環境センサーとして働く重要シグナル因子である。PHK1/2は被子植物等の大葉植物にホモログが無く、進化的にも興味深い。本研究により、PHK1/2を含むMSPが、概日時計に関わる「概日リン酸リレー系」であることを解明した。MSPは藍色細菌等での時計機能が知られるが、本研究は、植物MSPの新規生理機能を突き止め、概日時計の進化の重要な手がかりを得た点で意義深い。
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