研究課題/領域番号 |
19K06780
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
高野 敏行 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 教授 (90202150)
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研究分担者 |
都丸 雅敏 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 助教 (70324720)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 男性不妊 / オス不妊 / 精子形成 / 精子成熟 / ショウジョウバエ / 生物種間横断研究 / 精子とメスとの相互作用 |
研究実績の概要 |
ヒト疾患データベースには1,000を超える男性不妊候補遺伝子が登録されている。しかし、これらはオミクス解析によるもので、関連を掘り当てたにすぎない。実際、その多くはマウス、ショウジョウバエといったモデル生物でオス不妊遺伝子に挙げられていない。そこで,これらの候補遺伝子が実際にオスの妊性へ関与するのか、ショウジョウバエをモデルとして検証することを目的とした。RNAiスクリーニングによって同定した63の新規オス不妊遺伝子のうち、今年度はヌル(機能破壊体)アレルのホモ接合体が、生存、メスの妊性に影響を及ぼすことなく、オス完全不妊を示すNep4 遺伝子に関して解析を進め、次の結果を得た。この変異体オスも、ほぼ正常に見える精子を作ることができ、精子は正常にメスの貯精器官に移行する。ところが、それから間もなく貯精器官から精子が捨てられはじめ、24時間後には5%以下にまで減少する。残った精子も受精率は低く、また受精できても胚発生が正常に進行せず、致死となる。精子とメスの細胞・器官とのコミュケーションにエラーが生じていると推察される。このNep4には、このエンドペプチダーゼが属するM13 metallopeptidasesに典型的な膜貫通型とシグナルペプチド配列をもち、膜貫通ドメインのない2つのアイソフォームが存在する。精巣のRNA発現解析から精巣では主に後者が発現していること、またアイソフォーム特異的な変異体を作出することでこれを欠くとオス不妊となることを実証した。この分泌性のエンドペプチダーゼが精子成熟、メスの細胞・組織との相互作用に果たす役割を明らかにすることが次のステップになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
精子とメスの細胞・器官とのコミュニュケーションに働くと予想される複数の遺伝子を同定し、メスの受精嚢への移行、受精嚢での正常な貯蔵・利用に障害であることを明らかにしてきた。そのうちのひとつNep4遺伝子がコードする分泌性タンパク質がメスの貯精器官での貯精や受精に必須であることを明らかにできた。今後、さらにメスの貯精器官での正常な貯蔵や有効な精子利用に働く因子の同定を進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
精子とメスとの相互作用を正しく理解するには、当然、オスだけでなく、メス側の因子も同定、その働きを理解する必要がある。オスの附属線で産生され、精子とともにメス体内に送り込まれるSex Peptide(SP)の受容体(SP受容体)以外に、精子との相互作用に働くメスで発現する因子はほとんど知られていない。その理由の一つはメスの貯精障害をスクリーニングする有効な系がなかったことがあげられる。そこでスクリーニングにつかえる、メスの貯精器官である管状受精嚢で特異的に発現するGAL4ドライバー系統を選定することにした。現在、管状受精嚢で高発現する遺伝子に関連するドライバー系統の管状受精嚢内での発現細胞を調査中である。すでに管状受精嚢の多くの細胞、あるいは一部の細胞・区画で発現するドライバーを得ている。調査を完了し、選んだドライバーをつかってメスで精子との相互作用に働く因子をスクリーニングする予定である。メス側で働く遺伝子を同定することで、精子とメスとのコミュケーションに働くメカニズム全体の理解に繋げる。
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