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2020 年度 実施状況報告書

連続的に分布する生物の集団遺伝学

研究課題

研究課題/領域番号 19K06782
研究機関九州大学

研究代表者

手島 康介  九州大学, 理学研究院, 准教授 (20447593)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード集団構造 / シミュレーション / 集団遺伝学
研究実績の概要

生物の遺伝的多様性を解析するためには、その集団構造を把握することが不可欠である。遺伝的データから集団構造を推定するにあたって、現実的には用いるデータの性質に起因する制約を受ける。そこで現在最も広く用いられている一塩基多型(SNP)データを想定し、SNPデータを用いて集団構造の推測を行なったときに生じる問題点と、その原因についての考察を行なった。
集団構造の推定はSNPデータを作成するときに使用する変異サイトリストの由来に応じたバイアスを受けることがわかった。得られた変異データそのものが変異箇所リストの作成に用いた分集団の情報に依存したデータとなるため、推定される集団構造は元のリスト作成集団の情報を強く反映したものとなる。そのため集団ごとの解像度はリスト作成集団近辺で高く、離れるに従って低くなることを明らかにした。すなわち変異データはできる限り「対称」となるように構築しなければならない。また通常は変異箇所全てを用いるわけではなく、一部を抽出してタイプされるが、その時の抽出方法に由来するバイアスにも気をつけなければならないことがわかった。個々の分集団における頻度データを用いて選択した場合、各集団固有に分化した変異情報が失われる傾向があり、分化の程度は過小に評価される。このバイアスを避けるためには、全集団のデータを統合して、その上で変異箇所を選択しなければならない。
上記SNPデータを用いた集団構造推定に関する問題点についての知見を論文にまとめ、投稿した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

「我々がこれまでに行ってきた遺伝的多様性解析はそもそも現実を適切に 把握できているのだろうか。逆の言い方をすると、現実を的確に認識するためにはどのような解析を行えばいいのであろうか」これは本研究課題を進めるにあたって取り組むべき第一の課題であった。この問題に関して、これまでにシミュレーションを用いた研究を行うことによって、バイアスの存在とその対処法について知見を重ねることができた。該当年度における研究の結果は、論文としてまとめ、学術雑誌に投稿することができた。
空間的に広がく分布域を持つ生物集団のシミュレーションに関しては、個々の微小空間に適応的力が働いた時のモジュールの作成を行なった。このモジュールのテストを行い、一般的な空間への拡張を行うことで、連続空間のある地域で適応を起こした状況を再現することができるであろう。

今後の研究の推進方策

今後はまず統合されたシミュレーションの完成を目指す必要がある。これまでに個々のパーツを揃えることができた。今後は各要素が想定通りの動作を行なっていることを確認したのちに統合し、運用を開始する。いくつか個別の研究課題で活用し、改善を繰り返したのち、一般公開へつなげる予定である。
さらに遺伝的多様性の理解として、空間的な広がりを持つ集団の遺伝的変異の分布状況をさらに詳細に調べる必要がある。さまざまな集団構造モデルのもとで、多種の統計量の挙動を調べる。これにより本研究が取り組むべき第二の課題である、これまでの集団遺伝学の枠組みでは捉えきれなかった側面へのアプローチについて、更なる知見を得ることができるものと期待される。

次年度使用額が生じた理由

当初参加予定であった日本遺伝学会が、コロナ禍の影響で開催が取りやめになったためその旅費を持ち越した。さらに当該年度に行なった研究を論文にまとめて投稿したが、もともとその投稿費用は年度内に支払う予定であった。しかし投稿や査読プロセスに想定よりも時間がかかったため、当初支払い予定であった論文投稿料と関連する費用が次年度へ持ち越された。次年度は未支払いの投稿料と、次年度に投稿予定の論文代に充当する予定である

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 適応進化とハプロタイプ長の関係についての考察2020

    • 著者名/発表者名
      中村遥、早川敏之、手島康介
    • 学会等名
      日本遺伝学会
  • [学会発表] バイアスを含んだデータのFSTへの影響2020

    • 著者名/発表者名
      道菅公大郎、河村嗟友、手島康介
    • 学会等名
      日本遺伝学会

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公開日: 2021-12-27  

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