| 研究課題/領域番号 |
19K06785
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| 研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究 |
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研究代表者 |
大竹 愛 (四宮愛) 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, 生命創成探究センター, 特任助教 (60452067)
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| 研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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| キーワード | 光周性 / 季節繁殖 / メダカ / 地理的変異 / QTL-seq / RNA-seq / 卵巣 |
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| 研究実績の概要 |
温帯地域では季節変化に伴って生物を取り巻く自然環境が大きく変動する。生物は日長や温度の変化を感知して、行動や生理機能を変化させて環境変化に適応しているが、その分子機構は不明な点が多い。メダカは長日繁殖動物であり、短日条件下で生殖腺が退縮することが知られている。これまでに日本各地のメダカ集団の短日応答を解析し、低緯度地域に短日への応答が不明瞭なメダカ集団が存在することを明らかにした。本研究では、脊椎動物の季節繁殖における短日感知と繁殖抑制の分子メカニズムの解明を目指し、メダカの地域集団を用いて、次世代シーケンサーを利用した遺伝学的解析およびトランスクリプトーム解析、ゲノム編集技術を応用した機能解析を行っている。
本年度は、短日への応答が明瞭な(応答型)串間集団、不明瞭な(不応答型)宮崎集団のF2世代雌の短日応答を解析し、QTL-seq法（Takagi et al. 2013, Plant J.）により、短日応答に関わる2つの量的形質遺伝子座（QTLs）を同定した。自然集団における短日応答とQTL領域の多型の関係を明らかにするため、これらが由来する生息地の野生個体を採集して短日応答を解析した。また、短日応答に働く遺伝子を明らかにするため、応答型の清須集団、不応答型の宮崎集団について、長日、短日条件において脳下垂体、視床下部を含む脳領域を採材し、RNA-seqを行い遺伝子発現量を系統間で比較した。清須と宮崎の遺伝解析から同定したQTL領域内の候補遺伝子について、CRISPR/Cas9システムでフレームシフト変異を導入された突然変異個体を解析した結果、短日応答への影響は認められなかったが、この遺伝子が不安様行動に関わる可能性が示された。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は遺伝解析に用いる家系を選抜する必要が生じ、また自然集団から採集した野生個体のサイズが十分ではなかったことから進捗に遅れを生じたが、本年はそれらの解析を計画に含めて実施し、以下のように進展した。
(実験1)串間と宮崎を用いた遺伝解析では、F2雌135個体の短日応答を解析し、生殖腺指数(GSI)が上位、下位群を不応答型および応答型として、各群のバルクＤＮＡから全ゲノムシーケンスデータを取得した。公開されているメダカゲノム配列をリファレンスとして、一塩基多型(SNPs)、indel多型とその頻度を解析し、bmansfeld/QTLseqR を用いたQTL-seq解析（Takagi et al., Plant J 2013）から、異なる染色体上に2つのQTLを同定した（信頼区間95%）。また自然集団に存在する多型を明らかにするために、串間および宮崎の野生個体を採集して短日応答の解析を行ったところ、各集団内に表現型の多型があり、その出現頻度が集団間で異なっていた。今後、次世代の解析から結果を検証する。(実験2) 応答型の清須と不応答型の宮崎のQTL領域の候補遺伝子について、アミノ酸翻訳領域のバリアントを検出し、アミノ酸置換の影響を評価した。(実験3) 清須と宮崎の集団について、長日および短日、各2タイムポイントについて、下垂体、視床下部を含む脳領域のRNA-seqを行い、短日処理によって発現量が変動する遺伝子を系統間で比較した。 (実験4) CRISPR/Cas9システムを用いて、候補遺伝子のノックアウトメダカを作出した。短日応答の解析では、野生型と変異型に有意差がみられず、短日応答におけるこの遺伝子の寄与は認められなかった。
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| 今後の研究の推進方策 |
串間、宮崎のF2世代のQTL-seq解析で同定した2つのQTL領域に存在する遺伝子について、系統間のバリアントを解析しアミノ酸置換の影響を評価する。串間と宮崎を含む九州4系統40個体について、既に得ているゲノムデータを利用した多型解析と、2021年に新規に採集した串間、宮崎集団、その子世代の多型と表現型の解析から、QTL領域の多型を精査する。また応答型の清須と不応答型の宮崎を検体とした、長日および短日、2タイムポイントのトランスクリプトーム（RNA-seq)解析において、系統、日長条件、時刻によって発現変動する遺伝子を解析し、短日応答に関連して働く遺伝子群を検討する。
短日による季節繁殖の停止機構について、本研究で得られた知見を学会発表、論文等を通して報告していく。
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