研究課題
台湾に生息するスインホーハナサキガエルは、2本の性染色体を繋げた相互転座によっての複合型性染色体を持つ。それゆえ、少なくとも3種類の性決定候補 補遺伝子が存在し、そのうち2つは、トリのDMRT1とヒトのSOX3(SRY)であることから、トリとヒトの性決定遺伝子を併せ持つ初めての脊椎動物である。本研究で は、3つの性決定遺伝子で構成される複合型性染色体の性決定様式と元祖型を起点としたその進化機構の解明を目的とする。平成2年度は、オスで三つ巴式の転座を生じた3本の染色体を直接的に証明するために、染色体のマイクロダイセクションを行い、それを蛍光色素でラベルすることにより染色体へのハイブリダイゼーションを行った。その結果、オスの減数分裂で形成される6価染色体は、予想通り、第1、第3、第7染色体の3本の染色体から構成されていることが明らかとなった。初年度からここまでの成果をまとめた論文が3月にCellsで出版された。一方、性連鎖マーカーの取得を目的として、オス10個体、メス10個体からDNAを抽出し、Diversity Array Technique解析を行った。オスでヘテロないし、オスにのみ出現するDNAマーカーを20個単離することに成功した。現在、その解析を行っている。また、転座が生じていない元祖集団についても同様の解析を行い、現在、結果待ちの状態である。また、集団解析については、北、東および中央の地域集団についてミトコンドリア遺伝子の12Sと16SrRNA遺伝子配列を決定したところ、北と東が1つのクレード、中央が別のクレードを形成した。また、コガタハナサキガエルとは明確に異なるクレードを形成した。なお、核ゲノムのマイクロサテライト解析についてはコガタハナサキガエルについてのみ結果を得たが、スインホーでは解析がうまく機能しなかった。
2: おおむね順調に進展している
昨年度、未達成であった染色体マッピングが達成できた。これにより、ここまでの結果を論文として出版できたことは大きな成果である。本年度達成目的の性連鎖マーカーも取得できた。また、スインホーハナサキガエルの地域集団の遺伝的関係も全体像が明らかになってきており、概ね順調に成果は出ている。
令和3年度は最終年度である。元祖集団の性染色体を同定することで祖先型の性染色体を同定し、元祖集団と転座集団における性決定遺伝子の同定とその発現解析を目的とする。そして、令和2年度に解析中のデータは解析を終了し、以上の成果をまとめることが最終目的である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Cells
巻: 10 ページ: 661
10.3390/cells10030661
Genes
巻: 12 ページ: 244
10.3390/genes12020244
Life Science Alliance
巻: - ページ: -
10.26508/lsa.202000905
Cytogenetic and Genome Research
https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/63680