研究課題
台湾に生息するスインホーハナサキガエルは、2本の染色体の相互転座によって生じた複合型性染色体を持つ。本研究では、その元祖型集団から近縁種のカエルに至る性決定と性染色体の進化機構の解明を目的とする。最初の2年間の研究における成果は以下のとおりである。染色体の後期複製パターンの詳細な解析と分子蛍光ハイブリダイゼーション(FISH)により、スインホーハナサキガエルにおける転座は2本ではなく3本の染色体間(第1、第3および第7番染色体)で生じ、本種は合計6本の性染色体を持つことが明らかとなった。さらに、核ゲノムの1塩基多型の解析により、30個の性特異的なDNAマーカーを同定した。一方、スインホーハナサキと近縁種コガタハナサキの系統進化を明らかにするために、ミトコンドリアDNAと核のマイクロサテライトを解析したところ、スインホーは2つの大きなクレードを形成し、その1つに転座集団が含まれる一方、コガタハナサキは2つの島(西表島、石垣島)間で明瞭な遺伝的分化が確認された。最終年度には、1)スインホーの転座を持たない元祖型集団について1塩基多型の解析を行い、元祖型性染色体が第1番染色体であること、 XX-XY型の性決定様式を持つことがわかった。なお、脊椎動物の性決定遺伝子Dmrt1はスインホーの第1番の性染色体上にあるが、今回同定した中で特に性に強く性に連鎖したマーカーはその位置とは離れていた。一方、2)コガタハナサキは第9番が性染色体であり、ZZ-ZW型の性決定様式であること、W染色体はヘテロクロマチン化が進み、すでに退化が始まっていることが明らかとなった。以上から、ハナサキガエル2種では、性染色体の取り替え、XY型からZW型への性決定様式の変換、そしてW染色体の異型化という、ダイナミックな性決定及び性染色体の進化が、極めて短い系統進化の間に生じたことが明らかになった。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
Current Herpetology
巻: 41 ページ: 132 137
10.5358/hsj.41.132
Development growth & differentiation
巻: - ページ: in press
Philos. Trans. R. Soc. B
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10.1098/rstb.2020.0105
https://amphibian.hiroshima-u.ac.jp/~miura/first.html