近縁な2種の海浜性ゾウムシにおいて、西日本における分布の重複状況とそこでのオス交尾器内袋骨片の形状、系統関係を調べたうえで、両者の間で交尾選択が強化されているかどうかについて調査した。その結果、この2種では分布が重複する北九州から山陰地方の一部にかけてスナムグリヒョウタンゾウムシの骨片が非重複地域のものより大きくなり、トビイロヒョウタンゾウムシの骨片が小さくなるという形質置換が確認された。この形質置換は系統的にまとまるそれぞれのクラスター内においても認められたことから、最近になって分布域が重複する箇所で進化したものと推定される。 種内および種間の集団を用いた交尾選択実験では、分布が離れているほど交尾しやすい傾向があったが、それ以上に種間での交尾選択が強く働いていた。交尾器の形状差が交尾選択や交尾時間、交尾の成功度に関与しているかどうかの調査では、形状差が大きいほど交尾時間が長くなる傾向が見られた。このゾウムシはマウント時間が集団内でも平均4-8時間と長く、オスはメスにマウントしている間は餌をとれないために、長い交尾時間は明らかなコストとなる。このため、交尾しても子供ができない種間交尾の過大なコストを避けるために種間での交尾選択が進化したものと推測される。 交尾器の変異に加えて、これらのゾウムシでは海浜の砂色に類似した鞘翅の色彩多型が認められた。これは特に砂色が白または黒に偏った砂浜において顕著であり、鳥への捕食を回避するための隠ぺい擬態となっている。この色彩の進化については今後より発展的な形でプロジェクトを展開する計画である。 以上の結果は2022年の生態学会で発表しており、現在論文を準備中である。
|