育児嚢は、タツノオトシゴを含むヨウジウオ科魚類のすべてのオスに見られる子育て器官である。その形態は体表に付着させるだけの単純なものから袋状のものまで主に5つの形態に分類され、ヨウジウオ科魚類の進化過程で頻繁にその形態が変化している。近縁種でのみ見られる器官ということは、ゲノム配列のわずかな違いによって形態を多様化させていると考えられ、形態進化を詳細に調べることが可能な良い実験題材である。ヨウジウオ科魚種は藻場やサンゴ礁など生活環境に合わせて多様化しており、ヨウジウオ科魚種の育児嚢の多様性進化について理解できれば、生物の生き残り戦略の一端を解き明かすことになる。
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