本年度は、昨年に引き続き、ヤツメウナギ胚の内耳トータルRNAから取得したトランスクリプトームデータの解析を行ったが、リファレンスゲノムの問題もあり、その進捗は計画より遅れている。一方で、この解析を行う過程において、ヤツメウナギ初期胚から通常のプロトコールによるRNA抽出が困難であるのが判明したため、本年度に抽出プロトコールの改良に取り組んだ。その結果、卵黄量が極めて多いヤツメウナギ初期卵割胚においても高収量、高純度なトータルRNAを得られる方法を確立した。これに関しては技術論文を投稿中である。 また、ヤツメウナギの繁殖シーズンには人工受精を行い、今後の遺伝子発現解析に使用するための十分な胚を得ることができた。この胚を用いて、ヤツメウナギに4種類あるOtx転写因子のホールマウントin situハイブリダイゼーションを行い、内耳における時空間的な情報を一部得たが、半規管が形成される幼生期の組織における実験技術これについてはさらなる実験が必要である。 一方で、今後の研究のため、受精卵にCRISPR/Cas9の導入し、特定の遺伝子をノックダウンするための予備的な技術検討を行い、次年度以降に特定の遺伝子のノックダウンが行えるか検討を行った。 ヌタウナギについては新規のサンプルを得ることはできなかったため、既存の胚を使ってできる解析について考えたい。 本研究課題と直結はしないものの、本研究を遂行する段階で得られたトランスクリプトームデータの提供や、遺伝子リソースの共有などによる共同研究の成果が2件発表された。
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