研究実績の概要 |
当該年度では研究計画に従い、基本的なスズキ系魚類の側線系(感丘の分布およびその神経支配)の観察を進めた。観察した分類群はハオコゼ科、アジ科、ニザダイ科、ツノダシ科、タナバタウオ科、タカサゴイシモチ科などである。これまで見逃されてきた、側線系の示す特徴が数多く明らかになった。神経系観察の目的は、一見類似した感丘の分布を神経支配によって、相同か非相同であるかの判断をすることにある。この目標の1到達点として下記の論文が公刊された。この論文では、テンジクダイ科内における非常に類似した表在感丘の分布が、複数の分類群間で収斂進化したことを神経支配に基づき論じている。
Convergent evolution of the lateral line system in Apogonidae (Teleostei: Percomorpha) determined from innervation.M Sato, M Nakae, K Sasaki - Journal of morphology, 2019 - Wiley Online Library https://doi.org/10.1002/jmor.20998
テンジクダイ科は、多数の表在感丘を有することで、コモリウオ科との姉妹関係が示唆されている。当該年度では、コモリウオ科の表在感丘の分布とその神経分布を詳細に観察し、収斂進化の結果であることが判明した。この知見はすでにCopeia誌に投稿し、現在査定のプロセスにある。Minor revisionであるので、近日中に公表される予定である。コモリウオ科における表在感丘は約373,000個であり、これはこれまでに記録されたどの魚種よりも多かった。SEMを用いた表在感丘(有毛細胞)の観察結果から、本科魚類は全方位からの刺激(流れ)に対してほぼ等価の感受性を有することが明らかになった。
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