研究課題/領域番号 |
19K06814
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研究機関 | 長浜バイオ大学 |
研究代表者 |
保科 亮 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 助教 (40373089)
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研究分担者 |
小倉 淳 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (60465929)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 細胞内共生 / 藻類 / 原生動物 / クロレラ / 繊毛虫 / Stentor pyriformis / Pediludiella daitoensis |
研究実績の概要 |
日本では、山頂や尾根伝いの池塘のみで見つかる、共生藻保有ラッパムシ、Stentor pyriformisを主たる対象として研究を進めた。本種はきわめて貧栄養な水域にもかかわらず、ときに高密度なブルームを形成する。本種の共生藻は、ミドリゾウリムシの共生藻としても知られ、共生に特化した進化を遂げているChlorella variabilisであることが分かったが、ミドリゾウリムシがもつそれとは遺伝的に異なることから、共生藻の共有イベントはかなり古いものと類推される。Stentor pyriformisの細胞内には1~3マイクロメートルの顆粒が多数見られた。この顆粒は、アミロペクチンを多く含むデンプンであることが判明した。共生藻による光合成に加え、細胞内にデンプンを蓄積するといった、まるで植物のようなストラテジーによって、貧栄養下を生き抜いているものと考えられる。なお、糖の貯蔵形態としてデンプンを有する動物や原生動物は、おそらく知られていない。細胞内共生を絡めた生存戦略を具現化した種として、さらなる解析をすすめている。 その他、さらに2種の共生藻保有ラッパムシに関する研究をおこなっている。どちらの共生藻もChlorella variabilisであったが、遺伝的、生理的特徴がそれぞれ異なっており、共生藻シェアリングの生態的背景や、利点について考察している。 緑色藻の分類にあっては、種の識別はInternal Transcribed Spacer 2 (ITS2)を用いた種分類が一般化してきているものの、属の定義はあいまいなまま残されている。研究代表者らは、南大東島で採取した繊毛虫Loxodesから単離した藻類を解析したところ、イカダモ科の新属に相当すると判断した。当該藻類のSSU rRNA二次構造を近縁他者のそれと比較した際にみられる、ユニークな相補的置換群を根拠とし、新属新種Pediludiella daitoensisを記載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
取り扱った対象生物種(MARP: 多数の球状緑色藻類を共生させる原生動物)の種数こそ少ないが、それぞれについて、予定以上に深い研究ができている。
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今後の研究の推進方策 |
ラッパムシ属(Stentor)には共生藻を持つ種が多く存在する。本属の共生藻と共生形態を集中的に調査する。 細胞内共生藻の有無とデンプン貯蔵の有無について、様々な原生動物について調査する。 代表的細胞内共生藻Chlorella variabilisの種内多様性と生理特性、ゲノムの違いについて探究する。
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