淡水域では自己の細胞内に多数の球状緑色藻類を共生させる様々な原生動物(MARP)がいる。しかし、それら共生藻の種、共生関係の安定度、地域依存性や共生による互いのメリットの有無など、その実態は不明な点が多い。 本研究の目的のひとつは、広くMARPを採集し、どういった種類の共生藻を持つのか、宿主種間、採集地間、採集時期間など詳細な比較・解析をおこない、共生の実態を明らかにすることにあった。新型コロナウィルス蔓延による外出自粛の影響により、サンプリングの機会が限られたが、共生藻を持つラッパムシ属(Stentor) 3種を中心に解析を進めた。地域依存で共生藻種が異なるラッパムシと、そうでないものがいるようで、今後検体数を増やして多様性の実態を明らかにする必要がある。 目的のもうひとつは、共生・非共生条件下における共生藻の比較トランスクリプトーム解析をおこなうことで、MARP内で何が起きているのかを探っていくことであった。この解析はミドリゾウリムシとクロレラ(Chlorella variabilis)を用いて進められ、クロレラは共生下において光吸収効率と炭素固定能力が亢進し、宿主への糖(マルトース)供給が増加することが判明した。
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