研究課題/領域番号 |
19K06818
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大原 昌宏 北海道大学, 総合博物館, 教授 (50221833)
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研究分担者 |
小林 憲生 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (00400036)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 海浜性昆虫 / 北部環太平洋 / 生物地理学 / 分類学 |
研究実績の概要 |
新型コロナの影響で、予定されていたアメリカ西海岸での海浜性甲虫個体群のコミュニティー構造の調査が実施できなかった。また、アメリカの個体群構造と比較をするアジア側の同緯度で個体群調査(北海道、宮城を予定していた)についても、外出自粛の影響から実施できなかった。そのため、旅費などの使用は全て次年度に繰越し、3年での研究計画を4年に変更した。昨年度に北米で調査を行い、サンプリングをしてきた甲虫類のソーティング、標本化、同定までを全て行い、インベントリーリストを作成した。特にゴミムシダマシ科のコホネゴミムシダマシ Phaeromera属については、北米産4種のうち2種はシノニムである可能性を示唆し(結果的に2種)、アジア産1種を含めた3種についての分類学的再検討の論文を作成し、ほぼ投稿の段階まで完成させた(研究協力者の博士課程院生、鈴村アリサとの共同研究)。チビキカワムシ科のイワハマムシ Aegialites属については、アジア側の種(複数種が含まれるコンプレックス)について形態学的解析が進み、北海道においては3種が認められ、そのうち2種については、分子解析も踏まえた上で、新種と判断され、形態解析と分類学的再検討を行った論文を作成し、ほぼ投稿の段階まで完成させた(研究協力者の修士課程院生、能瀬晴菜との共同研究)。またイワハマムシについては、アラスカの研究協力者であるD. Sikes博士のチーム(ノルウェーのV. Gusarov博士を含む)と研究協力と分担についての協議が進んでおり、アジア側を主に本研究チームが、アリューシャンから北米西海岸を主にSikes博士が行うことが同意され、北部環太平洋海岸線の生物地理学を行う国際的プロジェクトとして進行しつつある。以上、コロナによる実質的な成果は少なかったが、次年度以降に向けた研究の準備として、研究材料、人的交流が促進された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの影響により、予定されていた海外、国内調査が実施できなかったため、昨年度にサンプリングした標本の整理と再検討と、国際的な研究体制を整える業務をおこなった。再検討の結果は、出版までにはまだ至っていないがほぼ完成に近い原稿段階として、2分類群の新種記載と精緻な再記載を含む2論文がまとめられている。なお、アジア側の海浜性甲虫ハネカクシ科 Phucobus属について、本研究の協力研究者である韓国の安博士との共著論文として論文をまとめた。コロナが空けた後に、海外、国内調査を予定しており、経費の約8割を次年度以降に繰り越した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの影響から、2021年度も目的である北米西海岸の現地調査は困難であると判断した為、2021年度は、国内の海浜性甲虫調査の個体群内種構造、ギルト構造の解析に集中することとした。将来、北米の個体群内構造と比較が可能となった際のアジア側のデータの収集と整理、発表までをゴールとすることとした。したがって、国内調査として、北海道、宮城県、高知県のそれぞれ緯度の異なる3地域において、海浜性甲虫個体群内の構造解析を精緻に行い、標本化、種同定、インベントリーリスト作成、構造の記載を主とした論文の作成を行う。また、いくつかの分類群については、博物館標本の使用(北米の博物館からの借用標本も含む)による記載分類学、系統学的解析を並行して進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス蔓延の影響から、予定していた海外調査が実施できなかったため、令和2年度の残額が1,086,886円となった。主に野外でのフィールドワークが中止となる研究のため、使用計画と異なる使用額となった。 令和2年度の残額と令和3年度分請求額を合わせて、可能であれば海外野外調査とアメリカ(アラスカ大学博物館)での標本調査の実施を行うが、現状況では海外渡航はほぼ無理と判断し、国内での調査に変更し、北海道(道央太平洋側浜厚真)、仙台、高知の3箇所での調査に使用する予定である。
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