研究課題/領域番号 |
19K06824
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
三田 敏治 九州大学, 農学研究院, 助教 (90581851)
|
研究分担者 |
細石 真吾 九州大学, 熱帯農学研究センター, 助教 (80571273)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | ハチ目 / 東洋区 / 種多様性 / ベトナム |
研究実績の概要 |
主な調査先として,ベトナムのククフォン国立公園で野外調査を実施した.各種任意調査に加え,アリの巣からナナフシ卵を採集し,飼育によって寄生蜂を得た.本国立公園では,雨季の最盛期である8月中はナナフシ卵寄生蜂の個体密度が高いが,雨量が減り始める9月に差し掛かると数が減る傾向がみられた.そのほか,西表島などでもナナフシ卵寄生蜂の採集方法の検討を行った.カブトバチの個体密度の低い日本で採集に適した条件を明らかにすることができたことは,今後の研究の推進にも役立つと考えている. ククフォン国立公園ではフィールドカメラを設置し,ナナフシ卵に集まる昆虫相を調査した.カメラそのままではマクロ撮影ができないため,レンズなどを加工して至近距離で結像するように改良した.タイムラプス像を記録したところ,ナナフシ卵はアリ,カマドウマが利用していることが確かめられた.アリは種ごとに利用方法が異なっていた.小型のアリは蓋帽をその場で齧り取り,大型のアリは卵をそのまま巣へ持ち帰った.一方で,カマドウマはその場で卵を捕食した.また,飼育によって得たナナフシ卵を寄生蜂に与え,寄生させた.Mahinda属など一部の種では実際に産卵し,次世代を得ることができた.野外で採集した卵からも寄生蜂を羽化させた. ベトナムで得られた標本の種分類を進め,Mahinda属に複数の未記載種を見出した他,雌雄の対応に疑問が残されていたが,正しい組み合わせを飼育により確認した.そのほか,スミソニアン博物館のKrombeinコレクションとベトナム産種を比較し,確実性の高い同定を進めた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は野外調査の方法の検討と種分類を中心に実施した.予定していた野外調査は順調に進んでおり,当初の想定よりも良好な成果が得られている.ナナフシ卵は近縁種間で識別が難しい場合があり,対応付けをより厳密に行う必要があることがわかった.寄生蜂の分類はおおむねめどが立ったと考えている.室内の実験,特にGC/MSは学内共通機器の運用開始が遅れており実施できていないが,GCを用いて分析条件の検討はおおむね完了している.分子実験については,今年度はそれほど進捗は見られていない.
|
今後の研究の推進方策 |
野外調査の方法について,基本的な内容は準備したもので対応できていることが分かったた.西表島でカブトバチの効果的な採集方法が見つかったため,ベトナムは状況がわかっていて好適な調査地だが,当地だけでなく必要や状況に応じて調査地を再検討したいと考えている. 今後の課題として,特にフィールドカメラの設置条件,生きたメスの寄生蜂を得る採集方法の効率化の2点があげられる.フィールドカメラについては,マクロ撮影用の加工に改良を加えることで解決できる見込み.メスの寄生蜂を得るためには丹念な観察とトラップの見回りが不可欠だが,調査適期が雨季のため,天候の問題は改善しがたい.滞在期間や人数の見直しで改善を図りたい.また,今後は野外調査と並行して室内実験や分析にも取り組む. COVID-19の影響で野外調査,特に国外での調査が困難な状況が続く可能性を含め,安全な調査の実施に向けて状況に合わせて臨機応変に対応する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響で年度末の出張がキャンセルとなったため,一部予算が残った.この予算は,野外調査で使用する機材,フィールドカメラの加工に用いる材料などの購入経費として使用予定.
|