研究課題/領域番号 |
19K06826
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
廣瀬 大 日本大学, 薬学部, 准教授 (20513922)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 医真菌 / 島嶼 / 生物多様性 / 薬剤耐性 |
研究実績の概要 |
近年、世界の臨床現場においてアゾール系抗真菌薬に対する耐性株の出現が問題となっている。中でも、高い致死率を示すアスペルギルス症を引き起こすAspergillus属は最重要分類群である。本属の耐性株の中には野外環境に分布していたものが臨床に持ち込まれているものが存在すると指摘されている。本邦においては、Aspergillus fumigatus に近縁な複数種において薬剤耐性株が野外環境中で近年検出された。しかし、本邦における本分類群の環境中における種多様性や分布、生活様式などは良く分かっていない。そこで本研究では、伊豆・小笠原諸島をモデルフィールドとした生物多様性科学的調査を行う。各島におけるA. fumigatus 近縁種の分類学的記載を行うと共に、分子生態学的解析を行い、(1) 耐性菌種の分布を特徴付ける環境要因の解明と現状分布図の作成、(3) 高頻度種の分布形成プロセスの推定を行い、最終的に将来の分布予測を試みる。 2019年度は、大島、利島、式根島、三宅島、八丈島、母島において各島内複数サイトにおいて土壌を採取、研究室に持ち帰り滅菌コーンを用いたベイト法によりA. fumigatus 近縁種の分離培養を行った。分離培養した170菌株について形態学的特徴とカルモジュリン遺伝子の塩基配列に基づき種同定を行った。その結果、少なくとも5種のA. fumigatus 近縁種(A. felis、A. pseudoviridinutans、A. udagawae、A. lentulus、A. arcoverdensis)の分布が確認された。また、A. arcoverdensisを除く4種は森林が発達したサイトには殆ど分布していないことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、当初の計画よりも多くの島で調査を行うことができた。その分、予定していたよりも多くの菌株を得ることができ形態観察やDNA分析は全ての菌株について終了することはできなかった。これらのことに基づき区分を判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は以下の通り研究を推進する予定である。 1つ目の研究テーマである「種の記載と分布の実態調査」に関しては、三宅島、御蔵島、青ヶ島、父島で行う。各島の様々な環境の土壌を採取し、そこから分離培養法により対象菌種の分布密度を算出する。2019年度に分離された菌株と共にアゾール系抗真菌薬に対する感受性試験を行い分類学的記載を行う。 2つ目の研究テーマである「集団遺伝学的パターンの調査-分布の形成プロセスの推定」に関しては、対象菌種のうち最も高頻度で分布していると予想されるAspergillus viridinutuns complex およびA. udagawae を対象に一塩基多型に基づくジェノタイピングを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたよりも分離菌株が増え、一部の菌株のDNA分析を年度内に行うことができなかったため。次年度の早い段階でこれらの分析を行い執行する予定である。
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