ヒメミカヅキモには、+型と-型の遺伝的に決定された性を持ち、両性の間で他殖するヘテロタリズム系統が存在する。また、1細胞由来のクローン細胞の間で接合子をつくり自殖するホモタリズム系統が存在する。これら生殖様式の進化はヒメミカヅキモにおいて独立に複数回起きていることが明らかになっている。しかし、どの様に生殖様式が変化するのか、その機構は不明であった。 これまでにフローサイトメーターを用いて、ヘテロタリズム系統13株、ホモタリズム系統6株のゲノム量を明らかにした。ミカヅキモ属の培養細胞では、DNAが倍化するG2期に存在する細胞が多く、G1に存在する細胞が少ない場合があった。フローサイトメーターなど測光によりゲノム量を測定する際は、細胞周期の調整を行う必要があることが明らかとなり、接合藻類におけるフローサイトメーターを用いたゲノム量の測定方法を確立した。 また、ホモタリズム系統2株とヘテロタリズム系統4株のロングリードシーケンスデータおよび、ホモタリズム系統6株、ヘテロタリズム系統16株ののショートリードシーケンスを得ることに成功し、k-mer解析からゲノム量を算出した。様々な手法から得られたゲノム量情報をまとめることで、系統独立にゲノム量の増加、または減少が起きたことを示した。また、ゲノム量と形態的特徴の関係を明らかにした。同時に染色体観察を行うことで、ゲノム量と染色体数の関係を明らかにしている。ゲノム構造を解析することで、このゲノム量の多様性は部分的な重複によるものと考えている。さらに、ホモタリズム系統であるNaga37s-1のゲノム構造から、異なるヘテロ系統を親に持つ、交雑由来の系統であることが示唆された。ホモタリズム系統であるNaga37s-1がどのように生まれてきたのか、その経路が示された。
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