研究実績の概要 |
フタモンアシナガバチのコロニーを室内条件で飼育し、女王とワーカーの体表炭化水素(CHC)を定期的に採集した。女王については、コロニー採集時、ワーカー羽化時、羽化1週間後、2週間後、3週間後の5回採集し、ワーカーについては、羽化時、羽化1週間後、2週間後、3週間後、4週間後の5回採集した。採集した個体は同一個体とした。これらのCHC採集個体は、実験終了後回収し、解剖して卵巣の発達程度を調査した。ワーカーの卵巣の発達程度の分布型は明瞭な二山型となり、大きい方は産卵ワーカー、小さい方が非産卵ワーカーに該当した。女王、産卵ワーカー、非産卵ワーカーのCHCをNMDSで比較したところ、女王とワーカーには有意差が認められたが(PERMANOVA, P<0.05)、産卵ワーカーと非産卵ワーカーには違いが認められなかった(PERMANOVA, P>0.05)。CHCの変化を経時的に比較すると、女王のCHCが齢を重ねるにつれてワーカーのCHCに近づくことが明らかとなった。GCでは45のピークが認められたので、それらをrandomForest法によって分析した。その結果、n-C27, x-meC32, n-C30, 15, 17-; 13, 17-diMeC33, 13-, 15-, 17-meC35の5成分が女王とワーカーの違いに最も貢献している成分である事が明らかとなった。このうち、女王で発現量が多かった3成分について経時的な女王での変化を見ると、n-C27だけが経時的な変化を示すことが明らかとなった。特に、ワーカー出現時にn-C27の発現量が増えており、これらの結果は、女王はこの物質を通して自身の存在をアピールする、一種の女王フェロモン的な候補である事が明らかとなった。
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