研究課題/領域番号 |
19K06838
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
山口 幸 奈良女子大学, 大和・紀伊半島学研究所, 協力研究員 (20709191)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 性決定 / 性表現 / 適応進化 / 季節性 |
研究実績の概要 |
動物の性分化や性決定に関する内分泌学・生理学・分子生物学的機構は急速に明らかになっている。他方で、環境が適応度に与える影響の性差に注目して究極要因が研究されてきた。本研究では、両者を組み合わせた理論を展開する。今年度は、以下の5つのテーマに取り組んだ。 (1) 寄生性フジツボ フクロムシの季節性:フクロムシ幼生の性比変動モデルを作成した。雄の出現に関するESSでは、雌の出現がなだらかでも雄の出現は単一または複数のピークをもつことが明らかになった。論文は、2020年4月に国際誌に掲載された。 (2) 牛の乳房炎と屠殺処分の経済性:酪農にとって重大な問題である乳房炎を治療するべきか、屠殺し肉牛として出荷するべきかを、動的計画法で解析した。その結果、4つある牛の乳房のうち、2つ以上が乳房炎にかかったときに屠殺処分することが合理的であるとわかった。論文は2020年4月に国際誌に掲載された。 (3) 長寿命生物におけるがんのなりにくさ:野外で長寿命をもつゾウは、がんを抑制する機構をもつ。他方、飼育環境の改善により寿命が伸びたため悪性腫瘍になるペットが増加している。DNAの複製ミス抑制にコストがかかる状況で、進化すべきがんによる死亡率、環境改善にともなうがん死亡率の増大を明らかにした。論文は国際誌に投稿し審査中である。 (4) 海洋生物の発生多型:光合成するウミウシでは、卵の発生多型(直達発生とプランクトン幼生の生産を共に行う)が見られる。現在ゲーム理論による解析をおこなっている。 (5) 無性生殖から有性生殖への切り替え:ワムシとミジンコでは好適な環境条件下では無性生殖が行われ、効率よく増殖する。生育に不敵な環境が予測されると有性個体が出現し、交尾して耐久卵を産む。bed-hedging理論を解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度実施した5つのテーマのうち、(1)と(2)は2020年4月に国際誌に掲載された。(3)については国際誌に投稿し審査中である。計画以上に研究が進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
(1)無性生殖と有性生殖の切り替え 大部分のミジンコ種において、幼若ホルモンを作用させると雄が産出されること、またワムシにおいても幼若ホルモンが有性生殖を引き起こすことが、近年確認されている。そこで、幼若ホルモンの生産や分解のダイナミックスを考え、それらを制御する酵素と環境シグナルを取り入れた力学系モデルを展開し、雄が出現する条件を明らかにする。
(2)遺伝性決定と環境性決定 脊椎動物の性決定や性分化には多数の遺伝子の関与とともに、性ホルモンが極めて重要な役割を果たすことがわかっている。各アレルが温度依存性の異なる酵素をコードし、産卵時点における温度に基づいて反応することで性が決定されるとする。与えられた環境に応じて、異なるアレルが雌雄を決める遺伝性決定と、同一のアレルが温度によって雌雄を変える環境性決定のいずれが進化するかを計算する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年3月に予定していた出張がコロナウイルス感染拡散防止のため、キャンセルとなったため。 今年度は、原著論文をオープンアクセスにする、また計算機を複数台購入する予定である。
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