研究課題/領域番号 |
19K06838
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
山口 幸 東京女子大学, 現代教養学部, 講師 (20709191)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 発生多型 / 婚姻贈呈 / 有性生殖 / 無性生殖 |
研究実績の概要 |
本研究では、遺伝子ネットワークや発生的・生理的メカニズムを考慮したモデルの上に、自然淘汰や性淘汰が働くとき、どのような形質や環境応答が進化するかを探索するのが目的である。今年度は、主に3つのテーマに取り組んだ。 (1)海洋無脊椎動物の多くでは、卵の発生多型が見られる。3種類の生活史のうち、いずれが進化するか、複数の生活史が共存するかを考えるために、進化ゲームを解析した。その結果、[1]プランクトン時期での成長率や生存率が高い生産的な環境では摂食プランクトン産生型が進化する。 [2]複数の生活史の生産性が似ており、いずれかに密度依存性が強い場合は、1種内に複数の生活史が共存することが進化することがわかった。以上の結果は、観測されている海洋無脊椎動物の多様な生活史の進化パターンをうまく説明できる(Iwasa, Yusa & Yamaguchi 2022)。 (2)ガガンボモドキなどの昆虫の雄は交尾をする時に、餌などの「婚姻ギフト」を雌に渡す行動が見られる。雌が多数の雄と交尾し、雄が大きな婚姻ギフトを作ることが、雌の配偶者選択行動と好まれる雄の形質としてみたときに、それらが同時に進化する状況を解析する数理モデルを作成した。そこで[1]雌が直接的利益を受けるから多数回交尾が進化した、というモデルと、[2]雌は他の雌に好まれる雄を受け入れることで、間接的利益を受けて進化した、とするモデルの両者について、量的遺伝学の枠組みで説明した (Iwasa & Yamaguchi 2022 )。 (3)ワムシとミジンコでは好適な環境条件下では無性生殖が行われ、効率よく増殖する。しかし、生育に不敵な環境が予測されると有性個体が出現し、それらが交尾して耐久卵を算出する。生殖の切り替えが起こる条件について、bed-hedging理論を作成して解析をおこなっているが、まだ解決できていない問題がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度実施した3つのテーマのうち、(1)と(2)はすでに国際誌に掲載済みである。(3)については未解決の問題が残っている。また2021年度実施予定だった研究を進めることができなかったためである。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度実施できなかった研究計画を2022年度実施する。 (1)無性生殖と有性生殖の切り替え 大部分のミジンコ種において、幼若ホルモンを作用させると雄が産出されること、またワムシにおいても幼若ホルモンが有性生殖を引き起こすことが、近年確認されている。そこで、幼若ホルモンの生産や分解のダイナミックスを考え、それらを制御する酵素と環境シグナルを考慮した力学系モデルを展開し、雄が出現する条件を明らかにする。 (2)遺伝性決定と環境性決定 脊椎動物の性決定や性分化には多数の遺伝子の関与とともに、性ホルモンが極めて重要な役割を果たすことがわかっている。各アレルが温度依存性の異なる酵素をコードし、産卵時点における温度に基づいて反応することで性が決定されるとき、与えられた環境に応じて、異なるアレルが雌雄を決める遺伝性決定と、同一のアレルが温度によって雌雄を変える環境性決定のいずれが進化するかを計算する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症拡大防止により、共同研究者との打ち合わせ出張がキャンセルになり、また国内学会はzoomでのオンライン開催となったため。 次年度は原著をオープンアクセスにすること、また新たな計算機を導入する予定である。また共同研究者との打ち合わせ出張を実施する予定である。
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