深海熱水噴出域固有種であるマリアナイトエラゴカイが環境中から体内へ侵入する過剰な硫黄や金属を無毒化するため、腸管細胞内で球晶を形成するという仮説を検証した。本種と同所的に生息するウロコムシ類を比較対象として腸内細菌叢を調べたところ、両種は類似したがウロコムシ類では球晶を発見できなかった。また、本種に比べ含硫アミノ酸量が多い一方、金属元素量は少なかった。したがって、球晶の形成に腸内細菌は関与しないことが示唆され、硫黄や金属の代謝がウロコムシ類とは異なることを明らかにした。また、浅海性多毛類への曝露実験により、生息環境を問わず多毛類腸管に硫化物および金属の蓄積機構が存在する可能性が示唆された。
|