研究課題
沖縄県宮古島のサンゴ礁において、2021年8月、9月、12月に掃除魚擬態種ニセクロスジギンポおよび同属の非擬態種クロスジギンポの個体数をスノーケリングによる目視により調査した。南岸の調査地3地点のいずれにおいてもクロスジギンポが発見されず、2種の生存率を比較するためのデータを追加することはできなかった。沖縄県瀬底島のサンゴ礁においても、4月、8月、9月、10月にスノーケリングによりクロスジギンポを探したが発見することはできなかった。ニセクロスジギンポの群れによる卵食行動について、主として研究協力者が動画撮影を行い、役割分担について分析するとともに、音声を出していることを発見した。3年間のデータを分析し、宮古島における2種の生存率と摂餌行動を比較する論文原稿の執筆を開始した。宮古島においても瀬底島と同様に、2種とも夏に浮遊期を終えた幼魚(>5cm)が加入し、冬に個体数が減少する傾向が認められた。ニセクロスジギンポの減少は主な餌であるスズメダイ類の付着卵が利用できなくなる(繁殖期が終わる)ためと推察されたので、8月から12月にかけての2種の生存率を比較したが、使えるデータが2019年の分しかなく、生存率に有意差は認められなかった。摂餌行動としては、ニセクロスジギンポでは体長に関わらず、小魚の尾鰭かじりとスズメダイ類の卵食が見られた。瀬底島では、成長に伴い尾鰭かじりは減少し、卵食が増加する傾向がみられ、他の2種の餌(多毛類イバラカンザシの触手と二枚貝ヒメジャコガイの外套膜)は体長に関わらず利用していたが、宮古島には後者2種がほとんどなかったことから、大型個体でも卵食ができないときには鰭かじりをしていると考えられた。一方、クロスジギンポでは鰭かじりや卵食はまったくみられず、ニセクロスジギンポの掃除魚擬態の進化には鰭かじりが関与していることが強く示唆された。
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Galaxea, Journal of Coral Reef Studies
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Ethology
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