研究課題/領域番号 |
19K06847
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研究機関 | 千葉県立中央博物館 |
研究代表者 |
川瀬 裕司 千葉県立中央博物館, 分館海の博物館, 主任上席研究員 (10270620)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 繁殖生態 / 卵保護 / ハゼ科魚類 / 適応度 / 配偶者選択 |
研究実績の概要 |
申請者らは海底に精巧な円形幾何学模様の構造物(ミステリーサークル)をつくるフグを発見し,その生態や形成過程を解明して世界中のメディアで大きな話題になった。そのような中,フグとは全く別の分類群であるハゼ科で第2のミステリーサークルが発見されたのである。そこで本研究では,新たにミステリーサークルをつくることが発見されたトンガリハゼ属の1種-3 Oplopomos sp. 3 の繁殖行動を観察して,この放射状構造物の適応的意義と形成ロジックを解明することを目的とする。 これまでの予備調査で,このハゼは中央部にある基盤上で産卵・卵保護を行うことがわかっている(Kawase unpublished data)。そこで,ハゼは繁殖の際になぜ巣の周りに放射状構造をつくる必要があるのか,フィールドで潜水観察を行い明らかにする。さらに,ハゼがどのように綺麗な放射状構造をつくるのか,フィールドで得られたデータと動画をもとにコンピュータシミュレーションを行い明らかにする。 初年度は本種の生息域と分類学的位置づけに関する調査を行った。これまでの予備調査でトンガリハゼ属の一種3は沖縄本島中部東岸の水深7~8mの浅い砂泥底に生息しているのを確認している(Kawase unpublished data)。本種の他地域での生息状況を明らかにするため奄美大島北部西岸で潜水調査を行ったところ,水深30mの砂泥底で本種が営巣している様子を確認した。また,本種の定期的な観察地に指定した沖縄本島中部東岸で潜水調査を行ったところ,本種が営巣している同じエリア内に本種よりも小型のハゼ(全長約15mm)が同所的に生息し,しかも本種と同様に巣の周りに放射状構造物を形成しているのが確認された。そこでこの小型種を採集して調べたところ,ニラミハゼ属の一種Heteroplopomus sp.であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トンガリハゼ属の一種3は,ダイバーの観察により西表島から奄美大島の浅い砂泥底で確認されているが,今年度の調査では比較的深い水深の砂泥底にも生息しているのが初めて確認された。また,沖縄ではトンガリハゼ属の一種3と同所的に生息する別のハゼも巣の周りに放射状構造物を形成していることが新たに確認された。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の調査でトンガリハゼ属の一種3に加えてニラミハゼ属の一種も巣の周りに放射状構造物を形成していることが新たに発見された。このため,今後両種の比較生態学的研究も追加してフィールド調査を行っていく予定である。
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備考 |
現在取り組んでいる研究プロジェクトや最新の研究成果を紹介。
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