研究課題/領域番号 |
19K06850
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研究機関 | 石川県立大学 |
研究代表者 |
長谷川 克 石川県立大学, 生物資源環境学部, 客員研究員 (90724659)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 雛擬態 / 雄間闘争 / 系統種間比較 |
研究実績の概要 |
本研究課題は闘争行動における雛擬態行動の機能に着目しており、その目的に沿って以下に記す2つのサブテーマを同時的に進行している。サブテーマ1は身近な野鳥であるツバメとスズメを用いた野外調査、実験、室内実験であり、サブテーマ2はこれらの生物種を含む系統樹を用いた系統種間比較である。これらのサブテーマを統合的に扱うことで、種内・種間の両面から包括的にテーマに迫る。以下、それぞれの状況について分けて記した。
サブテーマ1の「幼体擬態が個体間相互作用にもたらす影響」については、ツバメの野外実験により、追加サンプルを得て、原稿を書き上げて学術雑誌に投稿中である。サンプル数は得ることができたので、近い将来に論文としてパブリッシュされることが見込める。また、過去のデータを用いた関連論文1点についてはパブリッシュすることができた。スズメについての実験、とくに室内実験については、実施したものの方法に欠陥が見つかり、手法の改善を行っているところである。ツバメの野外調査が一段落した最終年度に改めて実施を予定している。
サブテーマ2の「幼体擬態が種内分布パターンや他種との共起パターン、生物多様性全体に与える影響」については、いくつかの系統種間比較研究を行っているところであり、現在までに2つの原稿を投稿可能レベルまで仕上げることができた。このうち1つはすでに投稿し、レフェリーコメントをもらっており、これに従って改訂して再度投稿予定である。もう1つの原稿についてはサブテーマ1の成果とも関連することであるから、サブテーマ1のツバメの野外実験原稿の論文化と合わせて最適な段階での投稿を予定している。なお、このテーマに絡んで得られたデータを用いた別の系統種間比較論文1点をパブリッシュすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ツバメの野外調査についてはある程度の結果を得ることができ、投稿中の原稿も合わせて、これから形になっていくことが見込める。その一方でスズメの実験は飼育方法の不備もあって、当初予定したようには進んでいない。これは最終年度に挽回していく必要がある。系統種間比較についてはある程度の結果が得られており、論文化できたもの、現在原稿の状態にあるものがいくつかあるため、今後順調に成果を上げていくことができると見込める。進展が見られるツバメと系統種間比較の研究と、遅れているスズメの研究をトータルで判断して、課題全体としては「やや遅れている」段階にあると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ある程度結果がでているツバメの研究と系統種間比較に比べ、スズメの実験が遅れていることは明らかであるため、スズメの実験を優先的に遂行していく必要がある。飼育実験では依然として飼育方法に難があり、野外実験を行うにも対象種の特性からツバメほど効率的にデータが取れるわけではないことも明らかになっている。まずは飼育実験が最終年度内に実現可能かどうかを早急に見極め、可能な限り実験を遂行できるように手を打ち、また仮に実現可能性が薄いようであれば、スズメの実験の代わりにツバメを用いた代替実験、あるいは系統種間比較で代用できないか試していくことになる。ただし、すでにスズメの捕獲方法や飼育に必要となる環境は明らかになっており、あとは飼育環境の不備を改善するだけであるから、飼育実験の遂行は充分に可能だろう。細かい手法の改善にあたって実験の実現を目指している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの蔓延とそれに伴う外出規制などで当初予定していた国内学会や国際学会に参加できなかったために、大幅に予定が狂ってしまった。これによって旅費が少なくなった一方で、当初予定していた(県外)出張を伴う分子実験なども行うことができなくなっていたことから、次年度使用金を用いて大学内で実験を行うことを予定している。
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