• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実施状況報告書

単細胞生物におけるプログラム細胞死の進化に関する数理生態学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K06851
研究機関京都大学

研究代表者

山内 淳  京都大学, 生態学研究センター, 教授 (40270904)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードコロニー移住モデル / 多種共存 / 準競争排除
研究実績の概要

研究課題である単細胞生物の細胞死について、生物の分散・定着を定式化するコロニー移住モデルを用いて、理論モデル化し解析を行っている。コロニー移住モデルはもともと、競争関係にある多種が共存するメカニズムを解析するために提案されたものであるが、これを進化形質のダイナミクスの解析に適用することを目指している。しかしながらその過程で、コロニー移住モデルに基づく多種共存の解析自体にさらなる発展の余地があることに気づき、研究課題遂行のための手法の整備の一環として、コロニー形成モデルに基づく多種共存の解析を並行して進めている。その解析によって、コロニー移住モデルと種のランク-アバンダンスの関係について新たな知見が得られ、その成果を2つの学会で発表するとともに、「コロニー形成過程が準競争排除を通じて種の多様性を決定する」と題した論文として学術誌に発表した(Yamauchi, Ito, Shibasaki 2021, Ecology and Evolution)。さらに個体とサイトとの出会いに関して、オリジナルの定式の仮定を変更すると、群集動態が全く違った挙動を示すことを見出した。現在、その現象についても解析を進めているところである。
現時点では、研究課題を進めるための手法の理論的な整備にとらわれがちだが、それは単細胞生物の細胞死に関する理論モデルの構築のために必須の取り組みである。なお、本来の研究課題については、前年度までに予備的な成果を研究会や学会で発表しており、手法の整備の完了後、速やかに解析を再開し発展させることが可能な状況である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究課題である単細胞生物の細胞死の進化に関する理論的解析に対して、その解析に用いる理論モデルの整備とその基本的な特性の解明に取り組んでいる。結果として、本来の研究課題そのものの進捗はやや遅れ気味である。
解析手法として用いるコロニー移住モデルはすでにある程度性質が明らかになっているモデルだと考えていたが、解析の途上で、先行研究は必ずしもそれらの特性を十分に解明し切れていないことが分かった。研究課題を遂行するためには、コロニー移住モデルの理論的な性質を再検討することが必要である。そのための解析を進めた結果、コロニー移住モデルが元来対象としてきた多種共存メカニズムに関して新たな知見を見出し、それについて学会発表および論文発表(Yamauchi, Ito, Shibasaki 2021, Ecology and Evolution)を行った。これらは、本来の研究課題に関する取り組みそのものではないが、今後の解析の遂行に必要なものであり研究課題の方向性に沿うものである。
加えて、COVID-19のパンデミックも研究の進捗にある程度の影響をおよぼしている。当初考えていた海外出張や外国人研究者の渡航が不可能となり、研究に関連する情報の収集に差し障りが出ている。ただ、それを受けて当初の研究計画を変更して、予算の前倒しにより計算機環境を充実させるなど、影響を埋め合わせる対策を進めている。

今後の研究の推進方策

本来の研究課題から若干逸脱した研究を展開する形になっているが、それは本来の研究課題を進めるための手法の整備という意味から必要な取り組みである。現在までの取り組みの中で、コロニー移住モデルについてさらに新奇な性質を見出しつつある。コロニー移住モデルはもともとは多種の群集動態を記述するモデルで、多種が安定的に共存する状況をもたらすメカニズムである。ところが同一なモデルで、個体とサイトとの遭遇に関する仮定を変えると、群集動態が全く異なる挙動を示すことが分かってきた。本来の研究を進める上でこの特性の解明も不可避であり、コロニー移住モデルに関する解析を引き続き継続する。
手法の整備と並行して、本来の研究課題である単細胞生物の細胞死の進化に関する理論的解析も進めている。その成果は、前年度までにいくつかの研究会や学会で発表している。解析手法のコアであるコロニー移住モデルの特性の解明が完了すれば、それに基づいてこれまで解析を再検討し、解析をさらに進めることができる状況にある。コロニー移住モデルの解析を速やかに完了し、本来のテーマに立ち返って解析を進める予定である。
また、COVID-19の状況次第であるが、可能であれば国際学会での成果発表なども行いたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

COVID-19のパンデミックに伴って、予定していた国際学会への参加等が取りやめとなったことを受けて、研究の遂行計画を変更して計算機環境を整備するために40万円の前倒し支給を受けた。それを踏まえてPCを備品として購入したが、98万円あまりと当初考えていた金額よりも安く購入できたため、36万円ほどを次年度へと繰り越すこととなった。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [国際共同研究] University of British Columbia(カナダ)

    • 国名
      カナダ
    • 外国機関名
      University of British Columbia
  • [国際共同研究] University of Lausanne(スイス)

    • 国名
      スイス
    • 外国機関名
      University of Lausanne
  • [雑誌論文] Density regulation of co-occurring herbivores via two indirect effects mediated by biomass and non-specific induced plant defenses2021

    • 著者名/発表者名
      Yamauchi Atsushi、Ikegawa Yusuke、Ohgushi Takayuki、Namba Toshiyuki
    • 雑誌名

      Theoretical Ecology

      巻: 14 ページ: 41~55

    • DOI

      10.1007/s12080-020-00479-2

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Colonization process determines species diversity via competitive quasi‐exclusion2021

    • 著者名/発表者名
      Yamauchi Atsushi、Ito Koichi、Shibasaki Shota
    • 雑誌名

      Ecology and Evolution

      巻: 11 ページ: 4470~4480

    • DOI

      10.1002/ece3.7342

    • 査読あり
  • [学会発表] トレードオフをともなう移住過程による種多様性:理論と検証2021

    • 著者名/発表者名
      山内淳、伊藤公一、柴崎祥太
    • 学会等名
      日本生態学会
  • [学会発表] トレードオフをともなう移住過程が生み出す種多様性 :ランク-アバンダンス関係の検証2020

    • 著者名/発表者名
      山内淳、伊藤公一、柴崎祥太
    • 学会等名
      日本数理生物学会

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi