研究課題/領域番号 |
19K06855
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
宮崎 祐子 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (20443583)
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研究分担者 |
丑丸 敦史 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70399327)
井上 智美 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 主任研究員 (80435578)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 環境依存的性決定 / 日長 / 花成 / ツユクサ |
研究実績の概要 |
本年度は雄性両全性同株ケツユクサの栄養状態が両性花を誘導するメカニズムについて,ケツユクサの1番目の両性花の結実成功に伴う子房への資源配分による花序内の資源制限が2番目の花を雄花へ誘導しているという仮説を立て,1番目の花の開花から24時間以内の花序内の資源動態を調べることで,資源制限と雄花誘導の関係性を検証した. 開花期に無作為に選んだ花序の1番目の両性花に対し,開花直後に結実成功/失敗のどちらかの処理を施し,2番目の花の性を操作し,以下のように花序の各部位を採取した.2番目の花の性が決まる24時間以内の資源配分を調べるために1番目の花の子房を,さらに,その資源配分に伴う花序内の資源濃度の変化を調べるために総苞,花柄,2番目の花のつぼみを採取した.また,両性花および雄花生産に要するコストを調べるために,性を操作した2番目の花のつぼみを処理直後から開花直前の60時間後まで追跡し採取を行った.その後,各器官において繁殖器官に多く含まれ,制限要因となりやすい窒素(N)とリン(P)の濃度を測定し,各処理および採取時間において比較した. 1番目の花の開花から24時間以内に結実成功に伴う子房への資源配分は確認された一方で,子房への資源配分に同調する花序の各部位での資源濃度の減少はみられなかった.花柄においては結実成功に伴うN濃度の増加がみられ,花序外からのNの流入が示唆された.また,開花直前までのつぼみの資源濃度には花の性による違いがなかったものの,質量として算出したNおよびP含有量で比較したところ,先行研究同様,花生産に要するコストは雄花の方が安価であることが示された.よって,花序内の資源制限が安価な雄花の生産を誘導するという仮説は支持されず,ケツユクサ花序の2番目の花の雄花誘導はNおよびP濃度の制限によるものではないことが考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
様々なエコタイプの比較を行うため,より広範な緯度範囲から供試材料の採取を行う予定であったが,新型コロナウイルス感染症対策のため移動が制限され,新規材料の獲得に遅れが出ている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,ケツユクサが「生育環境の日長が異なるエコタイプは,B1両性花の結実後であってもB2花に両性花が誘導されるのに必要な暗期の長さが異なるよう適応しているか」「気温上昇によって秋の生育期が延長された場合、短日条件が花の両性化をもたらすことによって種子生産量が増加する可能性があるか 」という問いに答えるため,これまでに採取したエコタイプに加え,新型コロナウイルス感染症対策を行いつつ,北海道の個体群からも植物体および種子の採取を試みる。それらを用いて引き続き実験を行う。また,上記の実験の際に遺伝子発現解析のためのサンプルを採取し,B2花に両性花が誘導される場合,およびされない場合において発現変化している遺伝子の特定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたエコタイプの採取のための出張が制限されたため,支出を予定していた旅費が大幅に使用されなかった。また,産前産後の休暇および育児休業の取得が1月より生じたため,次年度使用額が生じた。次年度使用額についてはエコタイプの採取を試みること,予定していた実験を次年度に行うことで使用する計画である。
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