研究課題/領域番号 |
19K06856
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
粕谷 英一 九州大学, 理学研究院, 准教授 (00161050)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ノンパラメトリック検定 / データ解析 / 生態的データ / 統計的方法の誤用 / データの分布 |
研究実績の概要 |
2つの処理あるいは2つの条件間の、位置に関する対応のない比較という状況について、第1種の誤りの率ならびに検出力を、広い条件下で計算する数値計算プログラムを作り、Mann-WhitneyのU検定(Wilcoxon順位和検定と内容的に同じもの)およびそれを不等分散の場合向けに拡張した検定が、片方の分布を定数だけ移動したものが他方であるときには妥当であることに加え、不等分散の場合向けに拡張した検定はより広い条件すなわち分布が対称で片方の分布を拡大縮小して定数だけ移動すると他方となるときにも一般に妥当であることを確認できた。 また、分布についてのこの条件から外れる場合には、位置パラメーターとしてどのようなものを選ぶかにより結果は異なることが分かった。平均は、位置パラメーターとしてもっとも広く使われていると思われるが、上記の分布に関する条件が成り立たないときには、Mann-WhitneyのU検定でも不等分散の場合向けに拡張した検定であっても、平均を使用すると、第1種の誤りの率が公称値の十倍程度あるいはそれを超えるような大きな値となるケースも見出された。 それらに対する対策として、選ばれた位置の指標をパラメーターとした取り込んだモデルに基づいて、パラメトリック・ブートストラップを適用することを検討したところ、サンプルサイズがある程度大きいことが重要であることが示唆された。これは、サンプルサイズが小さいとサンプルからの分布の特定が難しくなり、モデルにおける分布の設定が現実とかい離する可能性が大きくなったことが原因の1つと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の中心的な内容である数値計算による検討は、年度後半には、研究補助者との接触がない形をとることが可能となったため、補助者を雇用して計算を進めることができ、年度前半の遅れを取り戻し、ほぼ予定に沿って行うことができた。新型コロナウイルスのまん延やそれへの対策である措置等により、発表を予定していた学会等での発表が行えないという状況が特に年度の前半に見られたが、2021年3月には研究成果を日本生態学会大会において発表した。
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今後の研究の推進方策 |
必要な数値計算をさらに行いつつ、結果をまとめて、学会等で発表するとともに、論文として国際的な学術誌に投稿する。数値計算ではとくに、既存の検定がうまくいかないことがどのような特徴により起こるかの絞り込みと、既存の検定でうまくいかない場合の対策の開発に重点を置く。新型コロナウイルスのまん延に十分配慮して、必要に応じて、研究補助者を雇用して数値計算ならびにその可視化等を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染が拡大したことにより、年度の早い時期に研究活動が行えない期間があり、研究補助者の雇用が進められなかったこと、学会等がオンラインで開催されることがあったとともに学会への対面での参加を控えることが望ましく、成果発表のための旅費が使用できなかったためである。
今年度の使用計画として、まず、昨年度中に、対面を行わず、新型コロナウイルス感染のリスクのある行為を避けながら研究補助者を雇用して計算を進めることが可能とわかったので、研究補助者の雇用の費用を使用する。また、国際的学術誌への論文投稿のための費用も使用し、学会については開催の状況が不透明であるため開催状況によっては研究発表のための旅費を使用する。
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