研究課題/領域番号 |
19K06860
|
研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
宮崎 智史 玉川大学, 農学部, 准教授 (20547781)
|
研究分担者 |
林 良信 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 講師 (70626803)
小川 浩太 九州大学, 比較社会文化研究院, 助教 (40733960)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | アリ / コロニー創設 / 育児 |
研究実績の概要 |
トビイロケアリ女王は単独創設を開始後2-5週間に単独で育児を行うこと、その際、3週目から5週目にかけて消化管内に餌物質を貯蔵することをこれまでに確認した。他種を用いた先行研究では、その餌物質が飛翔筋の分解物あるいは腹部消化管内の貯蔵物に由来すると考えられてきた。我々は本種の餌物質が腹部消化管内の貯蔵物ではなく飛翔筋の分解物に由来することを示す証拠を得た。また、それぞれのステージの女王をトランスクリプトーム解析用にサンプリングした。 カドフシアリには創設時に単独で育児を行う有翅女王と、協同するワーカーに育児を任せる無翅女王という多型が存在する。そこで両者のRAD-seqデータを解析し、育児の有無(多型)と関連するSNPが集中するゲノム領域を特定した。この領域には両者で異なる自然選択を受けたSNPも多数含まれた。したがってこのゲノム領域には女王多型および育児行動の発現に重要な役割を果たす遺伝子が存在すると期待される。現在、これらの多型間でトランスクリプトーム解析を行い、当該関連領域上の遺伝子発現を比較している。 また、育児行動の分子基盤を明らかにするために、無女王制トゲオオハリアリのワーカーにおける遺伝子発現の変化を調べた。これまでに、加齢に伴った育児から採餌への行動変化、そして社会環境の操作に伴う育児行動への逆行には、脳でのvitellogeninの発現上昇が重要であることを示していたが、その姉妹遺伝子であるvitellogenin-like Aの発現上昇も重要であることを確かめた。本研究成果は国際誌に掲載された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルス感染症の影響で、野外での採集、採集個体を用いての解析に遅れが生じた。その一方で既存のサンプルや取得済みのデータを用いての解析は予想以上の成果が得られた。 したがって総合的には順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はまず、トビイロケアリとカドフシアリを対象とした上記のトランスクリプトーム解析を実施する。 トビイロケアリについてはプロテオーム解析も実施し、餌物質の特定及び餌生産の至近機構の解明を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の影響で遅れているトランスクリプトーム解析のための費用を次年度に持ち越した。必要なサンプルは準備できているため、次年度中に実施する予定である。
|