研究課題/領域番号 |
19K06870
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
千葉 文子 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (90724972)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 法人類学 / 年齢推定 / computed tomography (CT) / 大腿骨 |
研究実績の概要 |
昨年度は大腿骨頭窩の形態的変化について肉眼的評価による先行研究に準拠し、辺縁に注目し独自に設定した修正分類(mP1~mP5)がCT画像上可能かどうか検討した。当初の計画では大腿骨頭窩辺縁の断面を冠状断及び矢状断の2方向で観察するとしていたが、類円形の骨頭窩を2方向の断面で評価すると観察断面の前端と後端では骨頭窩の辺縁に水平に近い画像になり、骨頭窩の辺縁の評価を目的としていることから骨頭窩に垂直な断面を評価する必要があるため不適であることが判明した。類円形である骨頭窩に垂直な平面で円形に再構成する任意断面再構成画像での観察を追加した結果、骨頭辺縁の形態は概ね観察可能であった。しかし、肉眼評価では辺縁の幅を0.5 mmや1 mm単位で分別して評価しているが、任意断面再構成画像上でこれらの計測による評価が困難であることが判明したため、分類を再修正した。また、連続した辺縁としての形態評価が困難であったため、三次元再構成画像での比較を実施した。計画時点で予想されていたものの三次元再構成画像では表示設定により大きく見え方が異なるため同一個人内でも骨頭窩の形態が大きく異なって観察されたため、再度任意断面再構成画像での観察に変更している。 今後は修正分類の妥当性の検討を目的と し、観察事例数を増やすことを検討している。 大腿骨の微細構造の評価については大腿骨片をマイクロCTで撮影し、微細構造の評価の検討のための予備的検討を行った。用いる工業用X線CTの条件からは数ミリ程度の骨片の撮影が望ましく、海綿骨を含めた撮影・分析は撮影条件の問題から中断している。皮質骨については、画像上オステオンの明瞭な観察は困難であるものの類似の構造が観察された。研磨標本を作成したが、同一断面での観察が困難であるため、こちらの対比のについても難航している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
CTを用いた大腿骨頭窩の評価については評価方法を昨年度の修正から再度修正した。具体的には、再構成断面の連続では辺縁の一部や全部などの全体を連続して評価することが困難であり、また、三次元再構成画像では大腿骨頭窩の形態評価が困難であることが判明したため、辺縁の隆起の最大幅や結節の形成状況に応じて分類を修正している。また、隆起の幅によってridgeとstout ridgeを区分しているが、当初0.5 mmや1 mmだったものの測定における誤差が大きくなることが判明したため、その幅をCT上の電子カーソルで問題なく区別可能な2 mmと4 mmに変更している。また、mP5については「大腿骨頭窩辺縁にstout ridgeを認め、また、骨性の結節noduleを認める、 またはnodule同士の癒合により窩全体が隆起する、 または骨吸収により大腿骨頭窩が多孔質として観察される、のいずれか」としていたが、これを窩全体が隆起するmP5nと、骨吸収により骨頭窩が多孔質として観察されるmP5pに分類した。 マイクロCTを用いた微細構造の評価については海面骨の撮影は中止した。一方で皮質骨は撮影可能であったものの、大腿骨の研磨標本との対比が同一断面ではできておらず、評価が難航している。 また、全体的にCOVID-19の対応に関連して研究の進捗は遅延した。
|
今後の研究の推進方策 |
マイクロCTを用いた皮質骨・海綿骨の評価については現時点では継続困難であるため一旦中止とする。また、COVID-19に関連し報告時点で外部機関への受託分析が困難であることから、皮質骨の微細構造の評価に関してもすでに実施済みの1例についての観察で一旦中止とした。 大腿骨頭窩の評価については、比較的繊細な骨の表面構造の観察に難航しているが、約100例の検討で観察可能な再度の修正分類を作成したため、情勢を鑑みつつ予定通りの進行を目標とする。また、骨表面の形態の観察を目的に、今後は3Dプリンターを用いての評価について検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
外部機関への受託分析のために確保していた予算については、初年度の予備的検討について研究協力という形で無償で実施されたために使用されなかった。次年度以降の受託分析での使用を予定していたものの、顕微鏡的評価とマイクロCTでの評価の直接対比が検体処理の都合上困難であるため、一旦中止したことにより使用が中止された。 今後、CTでの観察が困難で合った大腿骨頭の肉眼観察や対比を目的に3Dプリンターを導入するが、この操作用PCなど備品の購入を予定している。
|