大腿骨頭窩の形態的変化については、肉眼的評価による先行研究に準拠し、辺縁に注目し独自に設定した修正分類(mP1~mP5)がCT画像上可能かどうか検討した。当初の計画では大腿骨頭窩辺縁の断面を冠状断及び矢状断の2方向で観察するとしていたが、類円形の骨頭窩を2方向の断面で評価すると観察断面の前端と後端では 骨頭窩の辺縁に水平に近い画像になることが分かった。骨頭窩の辺縁の幅などの性状を評価することを目的としていることから骨頭窩に垂直な断面を評価する必 要があり、類円形である骨頭窩に垂直な平面で円形に再構成する任意断面再構成画像での観察を追加した。その結果、骨頭辺縁の形態は概ね評価が可能であった が、大腿骨の位置する解剖学的位置から、骨盤骨によるアーチファクトの影響を受け、一部詳細な評価は困難であった。また、大腿骨頭窩の多孔質の観察は困難であったが、大腿骨頭窩の断面のCT値が低下し、皮質骨が不連続になっていることが観察された。任意断面再構成画像での評価が困難であったため、白骨遺体の大腿骨を用い、3次元再構成画像での評価を追加で検討したが、使用するテンプレートでは安定して肉眼所見に対応する像が得られず、骨表面の形態変化を三次元再構成画像で実施することの困難さが示唆された。 大腿骨の微細構造の評価については、当初は骨粗鬆症等を評価する目的で海綿骨の観察を予定したが、用いる工業用X線CTの条件からは数ミリ程度の骨片の撮影が望ましく、海綿骨を含めた撮影・分析は撮影条件の問題から断念した。皮質骨に関しては、大腿骨骨幹部の皮質骨を約3 mm程度に切り出し、マイクロCTで撮影し、微細構造の評価の検討のための予備的検討を行った。画像上オステオンの明瞭な観察は困難であったが、類似の構造が観察された。また、研磨標本を作成しての対比検討を試みたが、同一標本同一部位での比較が困難であった。
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