研究実績の概要 |
口腔機能の転倒リスク予測因子としての可能性を検証するため、令和4年度からは大阪府との共同研究として、大阪府民におけるオーラルフレイルの現状と転倒リスクとの関連について検討した。それらの結果を研究成果としてまとめ、国際学会(2024年5月米国スポーツ医学会)ならびに英文学術論文(Geriatrics投稿中)等にて発表する。 研究成果の概要は以下の通りである。大阪府在住の50歳以上の対象計7,591名(男性3,021名、62±7歳)に対し、厚労省基本チェックリスト(KCL)の25項目、運動習慣、フレイルの認知度について、2020年と2021年にWeb調査を行った。既報に基づき、KCLの口腔機能に関する設問3項目中2項目以上に該当する者をオーラルフレイルとした。その結果、2020年に全体の17%がオーラルフレイルを有していた。2021年の調査で全体の19%が過去1年間に転倒を経験したと回答した。ロジスティック回帰分析において、フレイル認知度が低いことに加え、オーラルフレイルを有すること(オッズ比1.6)ならびに運動器フレイルを有すること(オッズ比3.3)が、その後1年間における転倒発生を説明する有意な因子となった。 従来、転倒ハイリスク者を抽出するためには、各種の運動機能テストを実施する必要があり、実際にこれらのテストには転倒ハイリスクのカットオフ値が提唱されてきた。しかし、これら運動機能テストの実施には場所の確保やマンパワーの問題があり、健康関連イベント等に足を運ぶ者以外には測定の機会が十分でなかった。上記の結果から、KCLを用いたオーラルフレイルの簡便なチェックが転倒ハイリスク者の抽出に活用できる可能性が示唆され、転倒、介護予防への取組み強化につなげられると考えられた。
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