研究実績の概要 |
GABAは主要な神経伝達物質であり、グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD; GAD65とGAD67の2型存在)によって合成される。GAD65とGAD67はそれぞれGad2とGad1の異なる遺伝子にコードされ、分子量、補酵素との親和性、細胞内局在などで違いがある。本研究において2種類のGad遺伝子についてそれぞれノックアウト(KO)ラットを作製し、表現型について同遺伝子のKOマウスと比較解析した結果、重症度が違うことを明らかにした。また、Gad1/Gad2ダブルノックアウト(DKO)ラット前脳のGABA含量が野生型ラットの0.3%であり、DKOラットがGABA欠損ラットとして利用できることを示した。 そこで、胎生期大脳皮質の神経発生におけるGABAの役割を明らかにするためにDKOラットと野生型ラットとを比較解析した。Pax6とTbr2はそれぞれ頂端側神経前駆細胞と基底側神経前駆細胞のマーカーである。それぞれの発現について胎生期18日(E18)大脳皮質を用いた免疫染色実験で検討した結果、Pax6陽性細胞数、Tbr2陽性細胞数がいずれもDKOラットの方が少なかった。DKOラットで神経前駆細胞数が減少するメカニズムを明らかにするために、細胞増殖能とアポトーシスについて検討した。リン酸化ヒストンH3(PH3)と切断カスパーゼ3(CC3)はそれぞれ増殖細胞とアポトーシスのマーカーであり、それぞれの抗体を用いた免疫染色実験で比較検討した。E14, E16, E18大脳皮質の脳室面でのPH3陽性細胞数を計測した結果、E16, E18でDKOラットの方が少なかった。一方、E14, E16, E18大脳皮質のCC3陽性細胞数はいずれの胎生期でもDKOラットと野生型ラットで差がなかった。以上の結果より、DKOラット大脳皮質では神経前駆細胞数が減っており、その原因が細胞増殖能の減少によることが推測された。
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