研究課題/領域番号 |
19K06886
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
藤本 聡志 九州大学, 医学研究院, 助教 (50586592)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 神経回路形成 / 自発神経活動 / 嗅球 / 樹状突起 / Rho GTPase |
研究実績の概要 |
本研究は、自発神経活動依存的な樹状突起リモデリングを示す僧帽細胞において、どのようにして1本の「勝者」となる樹状突起が安定化され、それ以外の「敗者」の樹状突起が刈り込まれるかについて明らかにするものである。 前年度までに、Rhoファミリー低分子量Gタンパク質であるRac1とRhoAが、それぞれ神経活動の下流で活性化され、樹状突起の安定化と刈り込み双方を制御する因子であるということを見出した。Rac1はシナプス入力が強いと推測される糸球体の領域で活性化が起こるのに対して、糸球体ではRhoAの抑制が起こると同時に細胞体では活性化が起こることがわかった。しかしながら、この単一細胞内でのシグナル分子の活性化の非対称性がどのように「勝者」「敗者」の決定にかかわっているかはいまだに不明であった。 今年度は、NMDA受容体下流での単一の樹状突起レベルでのRhoAの活性を計測した。NMDA刺激を行うと強いシナプス入力を受ける樹状突起ではRhoAは抑制され、シナプス入力を受けない樹状突起ではRhoAが活性化された。以上のことから、強い入力を受ける樹状突起では局所的にNMDA受容体を介してRhoAが抑制される一方、シナプス入力により生じた脱分極が細胞全体に伝播し、細胞全体でのRhoAの活性化を起こすことが示唆された。この神経活動依存的な側方抑制による細胞内競合が、1つだけの「勝者」とそれ以外の「敗者」を決定する機構であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
僧帽細胞が生後発達期の神経活動依存的な樹状突起リモデリングにおいて1本の樹状突起を安定化させ、その他の樹状突起を刈り込む機構について明らかにできたと考える。本成果を論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
僧帽細胞で見られるリモデリング制御機構が発達期における神経活動依存的な他の樹状突起リモデリング過程にも共通する仕組みであるかどうかを検証する。また、NMDA受容体の下流、および脱分極シグナルの下流でRhoAがそれぞれ抑制、活性化される分子機構についても探索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス対応による国内出張自粛、オンライン化および海外渡航規制による学術集会出張自粛により旅費が発生しなかったため、次年度使用額が生じることとなった。 引き続き研究を完遂し論文出版を行うために必要な消耗品費、旅費、論文出版費用等に使用する予定である。
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