研究実績の概要 |
応募者らは近年、神経回路の形成が急速に進む生後1週の発達期マウスにおいて、大脳皮質第5層の興奮性細胞が同種の細胞と選択的にgap junction(GJ)で結合する精密なネットワークを持つことを明らかにした(Science, 358, 610, 2017)。GJネットワークは生後2週目に消失したことから、成熟した脳の情報処理には直接関与せず、大脳皮質の神経回路形成に特化した機能を持つことが期待される。本研究課題では、1. GJネットワークの大脳皮質全体における全貌解明と、2. GJ機能操作法を用いたGJネットワークの機能探索を同時に進めることで、細胞種特異的な神経回路形成におけるGJネットワークの役割を迅速に解き明かしていく。 1.に関しては、第6層の興奮性細胞も第5層とよく似た細胞タイプ特異的なGJネットワークを持つことがわかり、論文投稿準備中である。また、第5層興奮性細胞の1種である皮質下投射細胞において、生後2週にシナプス形成が急速に進むことを見出し、生後1週のGJネットワークの関与が期待され、論文投稿準備中である。 2.に関しては、GJを構成するタンパク質であるコネキシンの遺伝子を、CRISPR-Cas9法によるノックアウトをすることで、GJネットワークの機能阻害を目指している。CRISPR-Cas9法でコネキシン遺伝子をノックアウトする系の確立のため、最初に、胎生期に発現があるとわかっているコネキシン43をノックアウトすることを試みている。また、SLENDR法(Cell, 165, 1803, 2018)でコネキシン43遺伝子にタグを付け、コネキシン43の発現と細胞内局在を抗体染色で調べることを進めている。
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