研究実績の概要 |
大脳皮質の興奮性細胞の種類は、第2/3層から第6層までの各層で異なり、また個々の層の中にも複数種類が存在する。それぞれ独自の神経回路を持つことで、大脳皮質の情報処理基盤を構築し、高度な脳機能を形作っていると考えられる。しかし、こうした細胞種特異的な神経回路が作られるメカニズムはよくわかっていない。応募者らは最近、神経回路の形成が急速に進む生後1週の発達期マウス大脳皮質において、第5層の2種類の主要な興奮性細胞が同種の細胞と選択的にgap junctionで結合する精密なネットワークを持つことを明らかにした(Science, 358, 610, 2017)。またgap junctionで結合する細胞同士の活動レベルは均一化されることを明らかにした(Neuroscience, 406, 554, 2019)。最近の応募者らの研究から、第2/3層の神経細胞もgap junctionを持つことを明らかにしており、本研究では活動レベル制御の回路形成への寄与を知るべく、Cav1.2およびそのgain-of-function変異でありTimothy症候群原因変異でもあるI1166T変異体を第2/3層細胞に強制発現させ、活動レベルを人為的に亢進した。すると、Cav1.2I1166T発現細胞ではその約20%で細胞移動に障害が見られ、脳梁軸索投射はCav1.2発現個体で部分的に、Cav1.2I1166T発現細胞でほぼ完全に消失した。Cav1.2遺伝子にI1166T変異を持つTimothy症候群患者でもこうした回路異常が起きている可能性を示唆する。本研究結果は2021年末に論文発表した(Frontiers in Neuroscience, 15(747951), 2021)。
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