研究課題/領域番号 |
19K06892
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
宮崎 勝彦 沖縄科学技術大学院大学, 神経計算ユニット, 研究員 (10426570)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | セロトニン / 光遺伝学 / 時間的不確実性 / 報酬待機行動 / 前頭眼窩野 / 内側前頭前野 |
研究実績の概要 |
将来の報酬がいつ獲得できるかを予測することができれば(時間的不確実性の減少)、動物が報酬獲得行動を持続する際に利点となる。それに対し、獲得できるのはかなり確実だがいつかが予測困難な場合(時間的不確実性の増大)は、予測できる場合に比べてより柔軟に適応することが要求される。申請者らは、背側縫線核のセロトニン神経活性化が、遅延報酬獲得のための辛抱強い待機を促進すること、この促進は遅延時間が一定の課題(一定遅延課題)よりランダムに変化する課題(ランダム遅延課題)でより効果的になることを見出した。本研究は、将来獲得できる報酬を辛抱強く待つことに関わるセロトニン神経系は、時間的に不確実な将来報酬獲得のための適応的な行動制御に関与するとの仮説のもと、①セロトニン活性化による報酬待機行動の促進効果が、将来獲得できる報酬のタイミ ングの変化(時間的不確実性)にどのように影響を受けるか、②セロトニン神経細胞の投射先神経細胞が時間的不確実性の変化とセロトニンに対してどのような神経応答を示すか、を調べることで時間的不確実な将来報酬に対して柔軟に行動を適応させる神経機構を解明する。 令和2年度は、前頭眼窩野に投射するセロトニン神経を活性化する場合と内側前頭前野に投射するセロトニン神経を活性化する場合で報酬待機行動の促進が異なることを見出し論文として発表した。前頭眼窩野のセロトニン神経活性化は一定遅延課題とランダム遅延課題の両方で報酬待機行動を促進したが、内側前頭前野のセロトニン神経活性化は、ランダム遅延課題でのみ報酬待機行動を促進した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの予備実験で、報酬遅延期間が規則的に変化する課題(規則的遅延課題)とランダムに変化する課題(ランダム遅延課題)では、ランダム遅延課題に対して規則的遅延課題において、報酬なし試行でのセロトニン活性化による待機行動促進作用が有意に減少することを見出した。 令和2年度は、前頭眼窩野に投射するセロトニン神経を活性化する場合と内側前頭前野に投射するセロトニン神経を活性化する場合で報酬待機行動の促進が異なることを見出し論文として発表した。前頭眼窩野のセロトニン神経活性化は一定遅延課題とランダム遅延課題の両方で報酬待機行動を促進したが、内側前頭前野のセロトニン神経活性化は、ランダム遅延課題でのみ報酬待機行動を促進した。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度では、背側縫線核セロトニン神経細胞が投射する領域で、セロトニン活性化による待機行動促進作用の時間的不確実性による影響をどのように受けるかを明らかにした。前頭眼窩野のセロトニン神経活性化は一定遅延課題とランダム遅延課題の両方で報酬待機行動を促進したが、内側前頭前野のセロトニン神経活性化は、ランダム遅延課題でのみ報酬待機行動を促進した。予備実験において、ランダム遅延課題では、前頭眼窩野と内側前頭前野でセロトニン活性化による待機行動促進作用が異なることが見出された。令和3年度では、前頭眼窩野と内側前頭前野から異なる時間的不確実性の課題を遂行中の神経活動記録を行う。セロトニン神経活性化が、前頭眼窩野と内側前頭前野の神経活動にどのような影響を与えるかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は、行動実験の結果を論文として発表することに力を注いだことにより、神経活動記録用の装置のセットアップを令和3年度の予算と合わせて使用することにしたため。
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