将来の報酬がいつ獲得できるかを予測することができれば(時間的不確実性の減少)、動物が報酬獲得行動を持続する際に利点となる。それに対し、獲得できるのはかなり確実だがいつかが予測困難な場合(時間的不確実性の増大)は、予測できる場合に比べてより柔軟に適応することが要求される。申請者らは、背側縫線核のセロトニン神経活性化が、遅延報酬獲得のための辛抱強い待機を促進すること、この促進は遅延時間が一定の課題(一定遅延課題)よりランダムに変化する課題(ランダム遅延課題)でより効果的になることを見出した。本研究は、将来獲得できる報酬を辛抱強く待つことに関わるセロトニン神経系は、時間的に不確実な将来報酬獲得のための適応的な行動制御に関与するとの仮説のもと、①セロトニン活性化による報酬待機行動の促進効果が、将来獲得できる報酬のタイミ ングの変化(時間的不確実性)にどのように影響を受けるか、②セロトニン神経細胞の投射先神経細胞が時間的不確実性の変化とセロトニンに対してどのような神経応答を示すか、を調べることで時間的不確実な将来報酬に対して柔軟に行動を適応させる神経機構を解明する。 令和3年度は、セロトニン神経細胞の投射先神経細胞が時間的不確実性の変化に対してどのような神経応答を示すかを調べるために、課題遂行中マウスの前頭眼窩野からカルシウムイメージングによる神経活動記録を試みた。前頭眼窩野の神経細胞にアデノ随伴ウイルスを注入しカルシウム指示薬であるGCaMP7fを発現させ、小型蛍光顕微鏡カメラを用いて課題遂行中マウスから前頭眼窩野の個々の神経細胞の活動を記録することに成功した。現在、神経活動の解析を進めている。
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