脳老化に起因する神経変性疾患の多くは、特定タンパク質の機能低下あるいは毒性獲得などに誘発される可能性が指摘されている。申請者はこれまで一貫してタウ毒性伝播仮説の検証と毒性制御メカニズムの解明を目指し、生体イメージング技術を用いたタウタンパク質毒性メカニズムの探索とタウオパチーの治療薬開発を進めてきた。本研究では、タウ毒性伝播メカニズムの解明にむけて、独自のタウ凝集伝播の細胞・動物モデルを構築し、タンパク質凝集過程、細胞死、凝集タンパク質伝播過程などについて生体イメージング技術を用いて検証し、毒性分子種の同定とタウ伝播を抑制しうる治療薬の開発を目指してきた。昨年度までに、プリオン様伝播を呈するタウ凝集形成細胞モデルを構築し、動物実験の前段階としての治療薬評価系を確立した。また、P301L変異型ヒトタウ蛋白質を大脳皮質・海馬にて過剰発現し約6ヶ月齢にて凝集性タウ蛋白質封入体形成に伴う脳委縮が検出されるrTg4510タウオパチーマウスの早期脳病態として抑制性ニューロンの障害を明らかにした。本年度は、rTg4510タウオパチーマウスへの特定アミノ酸投与による病態抑制効果を明らかにし成果として報告した。また、独自のタウ凝集伝播モデルの構築のため、新規ノックイン型タウ発現マウスモデルを作出し、複数のミクログリアマーカータンパク質の病理学的検討を行い、タウ病態とミクログリア活性化の関連性を明らかにした。
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