研究課題
細胞内に広く分布するオルガネラである小胞体は、タンパク質や脂質合成・代謝、細胞内カルシウム貯蔵など、幅広い局面において重要な役割を果たしていることが示唆されている。近年、神経細胞において、細胞体のみならずシナプス前終末内のシナプス小胞近傍にも小胞体の分枝細管が存在し、さらにはシナプス前終末内においてエンドソームをはじめとする他の膜構造ともネットワークを形成するなど、従来の想定を超える分布形態を示すことが報告されているが、その機能的役割は不明な点が多い。そこで、こうしたシナプス前終末に存在する小胞体の機能を明らかにするため、小胞体の働きを制御する機能分子をシナプス前終末特異的に欠損させたマウスを用い、小胞体の機能異常が神経伝達物質放出機構およびシナプス可塑性などの脳の生理機能に及ぼす影響を検討する目的で実験を行った。令和元年度は、作製したシナプス前終末特異的機能分子欠損マウスを用い、組織学的解析および生化学的解析を行い、目的とする機能分子の神経終末における欠損を確認するとともに、シナプス関連タンパクの発現変化について検討を行った。また、急性海馬スライス標本を用いた電気生理学的解析を行った結果、小胞体機能分子の欠損によりシナプス短期可塑性が影響を受けることを示唆するデータを得ることができた。令和2年度はこれらの実験結果を確定するとともに、より詳細な解析を進めて学会発表および論文発表を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
初年度に計画していた組織学的解析は終了し、生化学、電気生理学的手法を用いた機能解析もかなり進めることができたため、全体としておおむね順調に進展していると判断した。
当初の計画通り、シナプス伝達や可塑性の変化について解析を行う。特に、現在得られているシナプス短期可塑性の異常について、その詳細なメカニズムを電気生理学的および生化学的手法を用いて明らかにする予定である。
研究内容を公表する段階にはまだないため、この課題に関する学会発表等を行わなかったことから、旅費が生じなかった。次年度は機能解析をさらに進めるため、主に物品費を中心に使用する予定である。また、研究の進展によりこの課題に関する学会発表を行うことになるため、その経費としても使用する予定である。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Neuroscience
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